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卯辰山は、標高141メートルほどの低い山で、短い上りを繰り返す坂道トレーニングに向いた場所です。YAMAPに載っている往復コースは約1.7キロで、獲得標高は約98メートルです。山頂の近くまで車道が通り、金沢駅からバスも出ているので、市内から走って上ることも、バスで上がってから走り始めることもできます。
山全体は卯辰山公園という自然公園になっていて、所在地は金沢市の末広町地内、面積は約92.8ヘクタールあります。園内には芝生広場やアジサイ園、展望デッキ、休憩舎、トイレがあります。

YAMAPの卯辰山往復コースは標準タイム40分、難易度は「やさしい」
1本の基準にするなら、YAMAPがモデルコースとして載せている「卯辰山 往復コース」がわかりやすいです。往復の距離は約1.7キロ、獲得標高は約98メートルあります。
ランナーが残した記録を見ても、1周の距離が1.8〜2.3キロ、獲得標高が75〜107メートルほどの短い周回がよく出てきます。春日山と卯辰山をセットにした記録でも、距離は1.9〜2.2キロ、標高差は75〜85メートル程度のものが中心でした。
YAMAPは、電波の届かない山の中でも自分の位置を確かめられる登山地図GPSアプリで、累計ダウンロード数は310万に達しています。登山の記録ページにあたる「活動日記」では、経過したタイムや距離のほか、チェックポイント、GPXデータ、上りと下りそれぞれの標高差を確認できます。同じページに出るコース定数は標準タイムをもとに計算される数字で、大きいほど難しいコースです。標準タイム1時間7分で「やさしい」とされたコースのコース定数は4です。卯辰山の往復コースも標準タイム40分で、同じ「やさしい」の区分に入ります。
獲得標高は上った高さだけを合計した数字
獲得標高とは、走ったり歩いたりした道のりのうち、上った高さをすべて足し合わせた値のことで、累積標高とも呼びます。下った分は数に入れません。スタート地点とゴール地点の高さの差とは別の数字で、上り下りを何度も繰り返す山道では、獲得標高のほうが大きくなります。計測には高度計と加速度計を組み合わせた方式が使われますが、気圧の変化やGPSのぶれで数値が動くこともあります。
上り100メートルごとに約1分をペースに足す
坂の多いコースのきつさは、1キロあたりの獲得標高で見当をつけられます。トレイルランでは、1キロあたり20〜40メートルなら中程度、40〜60メートルなら高難度という目安があります。
ペースを考えるときは、上り100メートルにつき約1分を足すのが目安で、この数字は条件によって前後します。卯辰山の往復コースに当てはめると、平地のペースに1分ほどを加えて見積もれます。
山歩きの所要時間を見積もる古典的な式には、ネイスミスの法則があります。水平距離5キロ(約3マイル)ごとに1時間、上りの標高差600メートル(約2000フィート)ごとに1時間を見込む計算です。
獲得標高200メートル台なら市街地から走って10キロ前後
距離を伸ばせば、10キロ前後で獲得標高200メートル台の練習も組めます。市街地から卯辰山まで走って向かい、山の中で上り下りを何回か入れる形です。実際に、10.1キロで獲得標高242メートルを上った記録があります。
距離を伸ばした例には、8.9キロを走って獲得標高が162メートルだった記録もあります。さらに長いものでは、片道約8キロある金沢の海側から卯辰山までをジョグで走った記録があり、春日山や金沢城などもめぐって合計35キロになった例もあります。
仲間と複数の山をつなぐ走り方もあります。2026年5月9日には非公式の集まり「金沢ゆるラン」があり、5名ほどが卯辰山、春日山、日和山の三つの山を走りました。
登り口は小坂神社と窯の横の階段、路面の違いで負荷が変わる
上り始めの場所としてランナーの記録に登場するのは、小坂神社から山へ入るルートと、窯の横にある階段から上るルートです。
山の中の道は一種類ではありません。卯辰山公園線のように幅の広い舗装道路もあれば、細い山道もあります。同じ山でも、どの道を選ぶかで脚にかかる負荷は違ってきます。
舗装路は足もとが安定しているので、ペースを一定に保ったまま上り続ける練習に向いています。山道のほうは足の置き場に気を配りながら進むぶん、脚の力とバランス感覚を鍛える場になります。
坂道ダッシュは蹴る力を鍛えるが、全力の上りばかりでは偏る
坂道ダッシュは、上り坂を蹴りながら駆け上がることで、地面を蹴り出す筋肉を強くするトレーニングです。
プロ野球の近本光司選手は、高校生のころ約180メートルの坂でダッシュを繰り返し、蹴る力がついたと振り返っています。
ただし、トレイルランナー向けの記事は、坂を全力で登る練習ばかりを繰り返すと逆効果になる場合があると注意を促しています。上りでは心拍数が上がりやすく、練習が高強度に偏りがちだからです。同じ記事は、坂の練習を低強度の有酸素運動や筋力強化、動作の技術練習と組み合わせるよう勧めています。
上り坂では10メートル先を見て歩幅を小さく
上り坂のフォームは、顔を上げて10メートルほど先を見るのが基本です。腕はしっかり振り、特に後ろへ引く動きで腰を持ち上げるようにします。歩幅は狭く、脚の回転は速くして、足の裏の前から3分の1ほどの部分で着地し、すぐに蹴り出します。脚の回転数は、1分間に180歩以上を保つという目安があります。
もっとも、正解の姿勢は一つではありません。体験談には、胸を張ったほうがかえって楽に上れたという声もあります。坂の傾きや自分の体つきに合わせて、走りやすい形を探してください。
ケイデンスの一般的な目安は1分間170〜180歩
ケイデンスとは、1分間に足が地面に着く回数のことで、ピッチとも呼ばれます。左右の足の接地を合わせて数えた値で、片方の足だけを数えた値はストライドレートといい、別のものです。走る速さは、ケイデンスとストライド(歩幅)を掛け合わせて決まります。
1分間180歩は広く知られた数字で、1980年代に長距離のトップ選手の走りを観察して示されたものです。一般には170〜180歩が効率のよい範囲とされ、ジョグなら160〜175歩、ペース走やインターバルなら175〜190歩くらいが目安です。
とはいえ、最適な歩数は身長や脚の長さ、走力、地形によって変わります。まず自分の今の数値を知り、1分あたり3〜5歩ずつ増やしていけば無理がありません。坂道で勾配が変わってもピッチを落とさないことが、フォームを安定させる手がかりです。
金沢駅から望湖台まではバスで20〜25分、駐車場は364台が無料
公共交通で行くなら、JR金沢駅で北鉄バスの卯辰山方面行きに乗れば、望湖台バス停まで20〜25分ほどです。望湖台はバス停から歩いてすぐです。
ひがし茶屋街を起点にする方法もあります。金沢駅で北陸鉄道の橋場町経由東部車庫行きバスに乗り、約10分の橋場町で降りると茶屋街です。そこから眺望の丘までは歩いて15〜20分ほどで、最後は階段でしか上がれません。茶屋街から歩いて上る道は迷路のように入り組んでいると感じた人もいて、川沿いの道を通るのも一つの手です。
車の場合、公園の駐車場は全部で364台あり、料金はかかりません。眺望の丘のそばには無料で停められる14台分の駐車場があり、花菖蒲園の近くには観光バス3台分のスペースもあります。
展望台は4か所、山頂の望湖台からは白山連峰まで見渡せる
卯辰山の展望台は現在4か所です。もとは望湖台、見晴らしの丘、横空台の3か所で、2019年3月に眺望の丘が加わりました。
山頂付近の望湖台は、卯辰山を代表する展望地です。河北潟や白山連峰、金沢の市街地を一度に見渡せ、空が澄んだ日には日本海まで見えます。見晴らしの丘からは兼六園と小立野台地が、横空台からは北アルプスや立山連峰が見えます。
いちばん新しい眺望の丘は、駐車場から階段を上りきったところに開けた展望の園地で、3000株のアジサイが植えられています。東山や森山のあたりを手前に、金沢の市街地越しに金沢港や河北潟の方向まで広がる景色を楽しめます。
金沢市は、卯辰山公園の眺望の丘や見晴らし台、望湖台を、ひがし茶屋街の卯辰山側などとあわせて眺望点に指定し、景観を守っています。
山頂付近の二等三角点の標高は141.15メートル
卯辰山の高さの根拠は、山頂付近に置かれた国土地理院の二等三角点です。その標高は141.15メートルです。三角点とは、三角測量によって経度と緯度が決められた点のことで、一等から四等までの等級のうち2番目にあたるのが二等三角点です。
花の見ごろは4月上旬の桜から7月中旬の花菖蒲まで
走りに行く季節を選ぶなら、花の時期に合わせるのも楽しみ方の一つです。卯辰山の主な花と見ごろは次のとおりです。
| 花 | 場所 | 数 | 見ごろ |
|---|---|---|---|
| 桜 | 四百年の森 | 約250本 | 4月上旬〜中旬 |
| ツツジ | 花木園 | 約8000本 | 4月下旬〜5月上旬 |
| 花菖蒲 | 花菖蒲園 | ハナショウブなど20万本 | 6月上旬〜7月中旬 |
| アジサイ | 花菖蒲園の周辺 | 約2900株 | 花菖蒲と重なる時期 |
山の中腹にある花菖蒲園では、6月ごろになると色とりどりの花が一面に咲きます。周りのアジサイと両方が咲きそろう時期は、走りながら景色を味わうのにちょうどよい季節です。
走り終わりは文学碑と工芸工房に寄り道できる
クールダウンには、園内の遊歩道を歩いて下るのがおすすめです。望湖台を出て遊歩道を下る散策コースがあり、途中で徳田秋聲の文学碑や泉鏡花の句碑、津田米次郎翁の碑と像などに立ち寄れます。走り終えた脚をほぐす歩きを兼ねられます。
卯辰山公園では、記念碑や文学碑が園内のあちこちで見られます。鏡花の句碑は卯辰山へ上る道の入り口の脇に目立たないように立っていて、「はゝこひし 夕山桜 峰の松」と刻まれています。鏡花が母を亡くしたのは小学生のころで、この句には母を失った思いが込められているとされます。
泉鏡花は、徳田秋聲、室生犀星とともに「金沢三大文豪」と呼ばれ、三人とも金沢市の生まれです。
金沢卯辰山工芸工房は観覧無料、毎週火曜が休館
山のふもとの卯辰町にある金沢卯辰山工芸工房も、クールダウンの立ち寄り先に組み込みやすい場所です。所在地は金沢市卯辰町ト10で、開館時間は9時30分から16時30分(入館は16時まで)、休館日は毎週火曜と年末年始で、観覧料はかかりません。
この工房は工芸の総合機関として、金沢市制100周年の記念事業で平成元年11月1日に設けられました。土台にあるのは加賀藩御細工所の精神で、工芸家の育成と工芸資料の展示、市民工房の運営を担ってきました。令和元年のリニューアルからは、「育てる」「つながる」「発信する」をテーマに据えています。加賀藩御細工所とは、加賀藩が金沢に置いた工芸品の製作所のことで、16世紀後半に設けられ、1868年に閉鎖されました。
バスで行く場合は、「山の上」バス停までJR金沢駅から乗り、そこから卯辰山公園線を約20分歩いて上ります。金沢駅からタクシーを使えば、約10分で着きます。展覧会「工芸に宿る時間」は、2026年10月14日から11月29日までの会期で開催中です。秋には研修生による工芸祭があり、ガラスや陶芸、金工などを体験できます。
ひがし茶屋街は2001年に重要伝統的建造物群保存地区に選定
眺望の丘へ歩いて上るときの起点になるひがし茶屋街は、浅野川の東側にあります。江戸時代後期から明治時代初めの茶屋建築がまとまって残る町並みで、2001年(平成13年)に国の重要伝統的建造物群保存地区に選ばれました。
卯辰山は江戸時代は入山禁止、1867年に前田慶寧が庶民に開いた
今は誰でも走れる卯辰山ですが、江戸時代は一般の人が入れない山でした。山の上から金沢城を見下ろせたためです。
開発のきっかけをつくったのは、加賀藩14代藩主の前田慶寧です。慶応3年(1867年)、福沢諭吉が前年に出した『西洋事情』に刺激を受け、卯辰山に庶民のための施設を整えました。養生所や修学所、芝居小屋が建ち並び、卯辰山天満宮(卯辰神社)もつくられました。これが卯辰山の開発の始まりとされています。
当時の様子は、地誌『卯辰山開拓録』に残っています。書いたのは「開拓山人」という人物とされ、養生所や舎密局、撫育所、卯辰神社などの新しい施設や、周辺にできた新町などを解説しています。
卯辰山公園としての開園は大正3年2月で、平成26年(2014年)2月に100周年を迎えました。
名前の由来は二説あります。まず、卯辰の方角、つまり金沢城から東の方角にあるからという説です。もう一つは金沢市が紹介している説で、前田慶寧が山を開いた際に、藩主の厚い徳に帰するという意味を込めて名づけたというものです。
冬の坂は凍結や濡れで滑りやすく、季節で道と装備を変える
日本海側気候の金沢では、夏の蒸し暑さと、冬の寒さや雪の多さが目立ちます。いちばん寒い1月は平均気温が5度前後で、最低気温が氷点下まで下がる日もあります。冬は雪とみぞれと雨が入りまじりやすく、天気が急に変わることもあります。
坂道は、凍ったり濡れたりすると足が滑りやすくなります。季節や天気を見て、走る道と装備を選んでください。園内の整備状況や通行の制限は変わることがあるので、出かける前に金沢市の公式情報を確認しておくと安心です。
卯辰山で坂を走るなら往復1.7キロのコースを基準にする
卯辰山では、往復約1.7キロ、獲得標高約98メートルの往復コースを1本の基準にできます。市街地から走って上り下りを重ねれば、10キロ前後で獲得標高200メートル台の練習にもなります。








