竹田城跡を望む定番のビュースポットは、朝来市の立雲峡です。ここから城跡までを結ぶ山道を走るランニングコースは、往復でおよそ10キロメートル、獲得標高500メートルを超える本格的なトレイルコースとなっています。雲海が発生しやすい早朝に走れば、石垣だけが雲の上に浮かぶ「天空の城」の姿に出会えることもあります。
この記事では、立雲峡から竹田城跡までのランニングコースの距離や高低差、雲海が発生しやすい気象条件と時期、駐車場やアクセスの実際、そして早朝に山道を走るうえで気をつけたいポイントまで、朝来市を訪れる前に知っておきたい情報をまとめました。

立雲峡から竹田城跡までのランニングコースは往復10キロ
立雲峡の駐車場を起点に竹田城跡まで走って往復するコースは、距離がおよそ10キロメートル、獲得標高がおよそ500メートルから600メートルとされています。舗装されたロードコースではなく、木の根や石が露出した未舗装の山道が大半を占めるため、通常のジョギングというより本格的なトレイルランニングに近い負荷がかかります。
コースの流れとしては、立雲峡駐車場からまず第三展望台、第二展望台と登り、竹田城跡が最も美しく見渡せるとされる第一展望台に至ります。駐車場から第一展望台までは徒歩でおよそ40分の道のりです。そこからさらに稜線沿いの尾根道を進んで竹田城跡の登城口へ下り、城跡内を見学しながら本丸周辺まで登り返すのが一般的なルートです。
下山ルートを変えるバリエーションもあります。竹田城跡から「駅裏登山道」を使って竹田駅方面へ直接下る片道コースを取ると、立雲峡から竹田駅までの走行距離は約10.4キロメートル、獲得標高は約589メートルになります。このルートを使う場合、車を竹田駅と立雲峡のどちらか一方に置いておくか、電車やタクシーで出発地点まで戻る計画をあらかじめ立てておく必要があります。
参考までに、それぞれの区間の目安時間を徒歩ベースで整理すると、次のようになります。
| 区間 | 目安時間 |
|---|---|
| 立雲峡駐車場から第三展望台 | 約5分 |
| 立雲峡駐車場から第二展望台 | 約10分 |
| 立雲峡駐車場から第一展望台 | 約40分 |
| 山城の郷から竹田城跡入口 | 約40分 |
| 竹田城跡入口から山城の郷 | 約30分 |
立雲峡側だけを往復する場合の所要時間は合計でおよそ1時間10分、山城の郷経由で竹田城跡を往復する場合もおよそ1時間10分です。両方を組み合わせて周回する場合は、休憩や城跡内の見学時間を含めて2時間から3時間ほど見ておくと余裕を持って動けます。
急な登り下りが繰り返されるコースのため、グリップ力の高いトレイルランニングシューズを履いておくことをおすすめします。竹田城跡の中は文化財である石垣を保護する目的で、石垣に登ったり飛び越えたりする行為が禁止されています。走るのはあくまで山道の区間にとどめ、城跡内は徒歩でのマナーを守った見学に切り替えてください。
竹田城跡の雲海は気温差10度以上と無風で発生確率が上がる
竹田城跡で雲海が見られるかどうかは、いくつかの気象条件が同時に重なるかどうかで決まります。目安となるのは、日中と早朝の気温差がおよそ10度以上あること、風速2メートル毎秒以下の無風に近い状態であること、相対湿度が75パーセント以上と高いこと、そして当日の朝によく晴れていることの4つです。
竹田城跡が立つ古城山周辺は円山川の支流が形成した盆地状の地形になっており、放射冷却で発生した霧が盆地にたまりやすい条件がそろっています。前日の日中の最高気温と早朝の最低気温の差が大きい日を天気予報で確認し、さらに直近数日以内に雨が降っていたかどうかもあわせてチェックすると、雲海に出会える可能性が見えてきます。
雲海のシーズンは9月下旬から12月上旬にかけてで、条件によっては4月ごろまで見られることもあります。年間を通じて発生確率が最も高いのは11月で、統計的にはおよそ40パーセントから50パーセントの確率とされています。ただし相手は自然現象なので、条件が良さそうな日でも見られないことがありますし、逆に思いがけないタイミングで美しい雲海に出会うこともあります。
雲海を見るのに適した時間帯は、日の出の前後30分から1時間程度です。日が昇って気温が上がり始めると霧は次第に消えていくため、暗いうちから展望台に到着し、日の出とともに変化する景色を見届けるのが定番の楽しみ方になっています。目安として日の出のおよそ1時間から1時間半前、午前5時前後に駐車場を出発しておくと、明るくなり始める時間に展望台へたどり着けます。
立雲峡の駐車場は無料で50台から60台、協力金は300円
立雲峡は朝来市加都地区にある兵庫県立自然公園内の渓谷で、竹田城跡が立つ古城山の対岸、朝来山の中腹に位置しています。竹田城跡とその周辺の山並みを正面から一望できる、雲海鑑賞の代表的なスポットです。
駐車場は無料で24時間開放されており、収容台数はおよそ50台から60台です。雲海シーズンの休日早朝は観光客とカメラマン、ランナーが同じ時間帯に集中するため、専用駐車場が満車になった場合は近隣の臨時駐車場へ誘導される運用が取られています。人気の高い休日は日の出のかなり前に満車になることもあるので、時間に余裕を持って向かってください。
立雲峡の利用にあたっては、環境整備協力金として高校生以上一人あたり300円が必要です。20人以上の団体であれば一人あたり250円になります。この協力金は遊歩道や展望台の整備に充てられているので、快く支払っておきたいところです。
アクセスについては、JR播但線の竹田駅から歩く場合、駐車場まで約2.9キロメートルの道のりがあり、歩き慣れた人でもおよそ1時間かかります。車の場合は北近畿豊岡自動車道の和田山インターチェンジからおよそ15分から20分が目安です。雲海シーズンの土日祝日には、竹田駅前を発着点とする期間限定のシャトルバスが運行されることもあるので、運行時期やダイヤは事前に確認しておくと安心です。
竹田城跡は1443年に山名宗全が築き赤松広秀が石垣を完成させた
竹田城跡は兵庫県朝来市和田山町竹田にある中世山城の跡で、国の史跡に指定されています。築城については諸説ありますが、1443年ごろ、但馬国守護であった山名宗全が家臣の太田垣光景に築かせたと伝えられ、13年をかけて完成したとされています。以後は太田垣氏が城代を務め、但馬支配の拠点としました。
1577年、羽柴秀長による但馬征伐で竹田城は落城し、その後は秀吉配下の武将が入城しました。1585年以降に城主となった赤松広秀の時代に、現在見られるような総石垣造りの城郭へと大きく改修されたとされています。ところが1600年の関ヶ原の戦いで西軍についた赤松広秀は、鳥取城下を焼き討ちした責任を問われて徳川家康の命により自刃し、竹田城はそのまま廃城となりました。
皮肉なことに、廃城後に手が入らなかったことが、貴重な石垣をほぼそのままの姿で今日まで残す結果につながっています。縄張りは古城山山頂を中心に南北約400メートル、東西約100メートルの範囲に広がり、天守台を中心に本丸、二の丸、三の丸などの曲輪が連なる連郭式の構造を持っています。石垣には自然石をほとんど加工せずに積む野面積みという技法が使われており、近江から招かれた石工集団、穴太衆の仕事と伝えられています。
竹田城跡の観覧料金は大人が500円、中学生以下は無料です。開城期間は例年3月上旬から翌年1月上旬までで、積雪や凍結のおそれがある1月上旬から2月末ごろまでは休城となります。開城時間は季節によって変わるので、訪れる前に朝来市や公式サイトで最新の開城カレンダーを確認しておくと確実です。
竹田城跡は日本100名城の一つに数えられ、山の稜線に沿う石垣の姿が虎が伏せているように見えることから虎臥城とも呼ばれます。雲海に包まれたときの佇まいから「天空の城」「日本のマチュピチュ」とも呼ばれており、但馬地方を代表する観光地になっています。
早朝ランニングでは照明の確保と熊への警戒が欠かせない
雲海鑑賞を目的にしたランニングや早朝登山では、日の出前の真っ暗な時間帯から行動を始めることになるため、通常のトレイルランニング以上に安全への配慮が必要です。
まず欠かせないのが照明です。立雲峡や竹田城跡周辺の山道には街灯の類が一切なく、両手が自由に使えるヘッドライトが必須になります。懐中電灯だけを頼りに走るのは転倒や滑落のリスクを高めるので避けたいところです。予備の電池やモバイルバッテリーも一緒に持っておくと安心です。
もうひとつ気をつけたいのが野生動物、特にツキノワグマです。朝来市周辺の山林ではクマの目撃情報が報告されている地域があり、クマは日の出や日の入り前後に活動が活発になる習性を持つとされています。雲海鑑賞のために暗いうちから山道を歩いたり走ったりする行動は、クマが活動しやすい時間帯と重なりやすいので、鈴やホイッスルなど音の出るものを携行して自分の存在を早めに知らせておくことをおすすめします。複数人で行動することや、地元自治体や観光協会が発信する最新の目撃情報に目を通しておくことも有効です。
服装については、速乾性のインナーの上に薄手で防風性のあるウェアを重ね着すると、走行中と休憩中の体温差に対応しやすくなります。長袖・長ズボンの化学繊維素材の服装は、防寒だけでなく後述するヒルなどからの肌の保護にも役立ちます。雲海が発生しやすい早朝は平地でも冷え込みますし、山中はさらに気温が下がるので、フリースやダウンにウインドブレーカーを重ねる3枚重ね程度の防寒装備を用意しておくと安心です。
体調管理も重要なポイントです。獲得標高500メートル超のアップダウンは距離の割に運動強度が高く、しかも早朝の冷えた体からのスタートになります。ウォーミングアップをしっかり行い、水分と行動食を携行してください。電波が不安定な区間もあり得るため、単独行動は避け、同行者や家族に行動予定を伝えておくと、もしものときにも安心です。
ヒルは梅雨から夏にかけて足元を狙ってくる
この一帯は湿度が高く、ヒルが生息しているという情報があります。特に梅雨の時期や雨上がりの草地、林床ではヒルに咬まれるリスクが高まります。市販のヒル除けスプレーを足元や靴、ズボンの裾に使っておくと被害を防ぎやすくなります。
雲海シーズンの休日早朝は、観光客や写真愛好家、ランナーが同じ時間帯に集中しやすく、駐車場は早い時間から埋まりがちです。展望台や城跡内は撮影に集中する人も多いため、走る際は周囲への配慮を優先し、狭い場所や人が密集している場所では速度を落とし、すれ違うときに一声かけるといった心配りをしておきたいところです。
竹田城跡へは4つの登山道があり駅裏登山道が最短ルート
立雲峡経由のルート以外にも、竹田城跡には複数の登山道が整備されています。JR竹田駅の背後から登る駅裏登山道は、赤松広秀の屋敷跡とされる場所を通り抜けるルートで、距離は約700メートル、所要時間は徒歩約40分です。竹田駅から直接歩き始められる手軽さがあります。
利用者の間で車道コースとも呼ばれる南登山道は、途中まで舗装された車道を通る比較的緩やかな勾配のルートで、所要時間は徒歩約1時間です。段差が少なく歩きやすい一方、距離はやや長くなります。表米神社を経由する表米神社登山道は山頂への最短距離のルートで、所要時間は徒歩約40分ですが、距離が短い分だけ勾配が急なため、初心者にはあまり向いていません。車で山城の郷駐車場まで上がってから歩く西登山道は、徒歩約40分で山頂に至る、マイカー利用者にとって最も一般的なルートです。
一般車両が使える主要な駐車場は、竹田城跡入口に最も近い山城の郷駐車場のほか、JR竹田駅周辺にも合わせて数百台規模の駐車スペースがあります。立雲峡と竹田城跡を周回するランニングコースを組む場合、下山時にこれらの登山道のいずれかを使って竹田駅方面へ抜け、電車やタクシーで立雲峡側の駐車場まで戻るという応用的なルート設計も可能です。
撮影には70から200ミリ相当の望遠ズームと三脚が必要
立雲峡から竹田城跡の雲海を撮影する場合、城跡までの距離があるため、標準ズームレンズだけでは城の姿を大きく捉えるのが難しくなります。城跡そのものをアップで捉えるには、目安として170ミリ相当程度の望遠域が必要とされ、70ミリから200ミリ相当の望遠ズームレンズが使われることが多いようです。手持ちでは手ブレが出やすい焦点距離なので、三脚とリモートシャッターかセルフタイマー機能を組み合わせて、薄暗い時間帯でもぶれのない写真を狙うのが基本になります。
バッテリーは低温下で消耗が早まるため、予備を2本ほど持っておくと安心です。朝露や結露からレンズを守るための布や、状況に応じたNDフィルターがあると表現の幅も広がります。日の出の時刻は季節によって変わりますが、雲海シーズンの目安は午前6時台前半に日が昇り始め、7時前後にかけて雲海が最も美しく広がる時間帯を迎えます。日が昇って気温が上がるにつれて霧は消えていくので、この前後1時間ほどがシャッターチャンスの本番です。
竹田の城下町では酒蔵を改装したホテルで前泊できる
竹田城跡の麓に広がる竹田の城下町は、寺町通りを中心に歴史的な町並みが今も残るエリアです。城跡見学やランニングの前後に立ち寄る観光客が多く、町家を改装したカフェやゲストハウスも点在しています。台湾家庭料理やスイーツ、かき氷を提供する店や手打ちそばの名店、リーズナブルなお好み焼き店など、飲食店のジャンルも幅広いです。早朝の雲海鑑賞やランニングのあとに、冷えた体を温める朝食や軽食を求めて城下町を歩いてみるのも良いでしょう。
宿泊施設としては、JR竹田駅至近の立地にある、旧酒造場をリノベーションした分散型ホテルが知られています。城下町の歴史的建造物を活用した客室が点在するホテルで、竹田城跡や立雲峡へのアクセスが良く、前泊して早朝の雲海鑑賞やランニングに備える拠点として利用されることが多いようです。日帰りではなく一泊して、朝来市の魅力をじっくり味わう旅程を組むのもおすすめです。
朝来市には生野銀山や但馬地方の温泉地も点在している
同じ朝来市内には、1200年以上の歴史を持つとされる史跡、生野銀山があります。日本の鉱業史や経済、文化に大きな影響を与えた坑道の一部が公開されており、竹田城跡とあわせて訪れる観光客も少なくありません。
竹田城跡から車で足を延ばせば、但馬地方には城崎温泉や湯村温泉、黒川温泉、吉滝温泉といった名の知れた温泉地も点在しています。早朝の雲海鑑賞やランニングで冷えた体を温泉でゆっくり癒やす、という一泊二日以上の旅程を組む人も多いようです。道の駅「但馬のまほろば」も、周辺の休憩や情報収集のスポットとして利用されています。竹田城跡と立雲峡だけを日帰りで巡るコースはもちろん、生野銀山や但馬地方の温泉地とあわせて2泊3日ほどでじっくり巡るモデルコースも紹介されています。
雲海シーズン以外に走っても渓谷の景観は楽しめる
立雲峡は雲海の展望スポットであると同時に、朝来山の中腹に広がる渓谷そのものが見どころになっています。渓流や巨石、老木が点在する山道を進むので、雲海が出ていない朝に走っても、渓谷歩きとしての満足感は十分に得られます。走りながら眼下に竹田の城下町を見下ろせる区間もあり、季節や天候を問わず訪れる価値のあるコースです。
雲海シーズンは秋から冬にかけてですが、それ以外の季節でも早朝であれば駐車場が混み合いにくく、静かな環境で山道を走れるという利点があります。天候に左右される雲海だけを目的にせず、渓谷そのものを楽しむトレイルコースとして計画を立てるのも一つの選び方です。
竹田城跡と立雲峡についてよくある疑問
立雲峡と竹田城跡はどちらから訪れるべきか迷う人もいるかもしれません。竹田城跡の石垣の内部構造や虎口の作りを間近で見たいなら城跡そのものへ、石垣の上に雲海がかかる「天空の城」の全景を写真に収めたいなら立雲峡の第一展望台へ向かうのが基本の考え方です。両方を1回の訪問で楽しみたい場合は、今回紹介したような周回ランニングコースや、山城の郷経由のルートを組み合わせるとよいでしょう。
雲海が確実に見られるかどうかも気になるところですが、これは自然現象である以上、100パーセントの保証はありません。気温差10度以上、無風、湿度75パーセント以上、当日の晴天という4つの条件がそろう日を狙って、9月下旬から12月上旬、なかでも発生確率が高い11月に計画を立てるのが現実的な方法です。
まとめ
立雲峡から竹田城跡を結ぶランニングコースは、往復約10キロメートル、獲得標高500メートル超という本格的なトレイルコースでありながら、条件が整えば雲海に浮かぶ石垣という他では味わえない景色に出会える点が魅力です。ヘッドライトによる照明の確保、防寒対策、熊対策、ヒル対策といった安全面の準備を整えたうえで、気温差や無風、湿度といった雲海発生の条件を天気予報で確認しながら計画を立ててみてください。竹田城跡や立雲峡、朝来市の公式情報で最新のアクセス方法や開城期間、シャトルバスの運行状況を確認しておくと、当日の行動がスムーズになります。








