福島の猪苗代湖を周回するランニングコース、距離は55キロ

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猪苗代湖を一周するランニングコースは、周囲約60キロメートル、実測ルートによっては55キロメートル前後になる長距離コースです。福島県のほぼ中央に広がる猪苗代湖の湖岸を丸ごとたどり、会津富士とも呼ばれる磐梯山を眺めながら走れることから、フルマラソンでは物足りなくなったランナーの次の目標として選ばれています。この記事では、距離や高低差、完走の目安タイム、湖畔の見どころ、補給計画の立て方まで、実際に走る前に知っておきたい情報をまとめました。

目次

猪苗代湖一周ランニングの距離は55キロから60キロ

猪苗代湖の外周は約60キロメートルとされていますが、湖岸に忠実に沿って走ると55キロメートル前後になったという記録も残っています。福島県は日本で4番目に広いこの湖を県のシンボルのひとつとして紹介しており、コースの呼び名は「イナイチ」です。もともとはサイクリストの間で定着した呼称で、自転車のロングライドコースとして先に知られるようになりました。近年はランナーの間でも「猪苗代湖一周ランニング」として広まりつつあり、フルマラソン(42.195キロメートル)を大きく超えるため、いわゆるウルトラランニングの領域に踏み込む挑戦になります。

コースの大部分は平坦に近く、湖の東側から北側にかけては見通しの良い直線区間が続きます。会津若松市寄りの南西部には小さな峠区間があり、地元では「金山の登り坂」と呼ばれています。実際に走った人の記録では、この坂を「魔の山」と表現するほどの負荷を感じたという声もあり、平坦基調のコースにおける体力的なアクセントになっています。会津若松方面は登りが多い区間としても知られているため、脚づくりを済ませてから挑む人が多いようです。

猪苗代湖は福島県会津若松市、郡山市、耶麻郡猪苗代町にまたがる断層湖です。20万年から30万年前、湖の東側と西側の断層によって地面が陥没し、猪苗代盆地が形成されたのが始まりとされています。その後、数万年前に磐梯山と猫魔ヶ岳の噴火にともなう翁島泥流によって長瀬川などの流路がふさがれ、盆地の低い部分に水がたまったことで、現在の猪苗代湖の原型ができあがったと推定されています。コースの北側にそびえる磐梯山の火山活動そのものが、いま走っている湖を生み出した地形だと考えると、景色の見え方も変わってきます。

湖水が澄んでいることから、猪苗代湖は古くから天鏡湖(てんきょうこ)の別名でも呼ばれてきました。平成14年度(2002年度)から4年間、環境省の水質調査で全国1位の評価を受けたこともあり、全国的にも珍しい泳げる湖です。湖水がもともと酸性だったことがこの高い水質を支えていましたが、近年はpHが上昇し中性化の傾向にあると報告されています。走りながら眺める湖面の青さや透明感には、こうした水質の背景があります。

磐梯山は標高1,816メートルの活火山で、火山活動はおよそ70万年前に始まったとされています。2011年には磐梯山ジオパークとして日本ジオパークに認定されました。噴火の歴史の中でも大きな出来事が1888年の水蒸気噴火です。この噴火では山体の一部が大規模に崩れ、発生した岩なだれが川をせき止めたことで、檜原湖をはじめとする周辺の湖沼群が生まれました。近代日本を襲った最初の大規模な自然災害のひとつともいわれています。磐梯火山では約2万5000年前以降マグマ噴火は起きておらず、水蒸気噴火のみが記録されています。直近5000年間では4回の水蒸気噴火が発生し、発生間隔はおよそ1100年から1700年とされています。走る途中で目にする湖の連なりは、この火山活動の歴史そのものが作り出した地形です。

猪苗代湖一周ランニングの完走目安タイムは6時間前後

猪苗代湖一周ランニングの所要時間は、ランナーの体力や休憩の取り方によって大きく変わります。55.24キロメートルを走破した経験者の記録では、完走タイムは6時間18分でした。50キロを過ぎたあたりから歩きを交えるペースになったといい、6時間切りを目標に設定するランナーも少なくありません。単純計算では、キロ6分前後のペースを終始維持できるかどうかが完走の分かれ目になります。

真夏は後半にかけて気温が上昇し、風がほとんど吹かない無風区間で体力を消耗しやすいという報告もあります。季節や時間帯の選び方が完走の鍵を握るコースといえるでしょう。自転車での所要時間や難所の感じ方と、ランニングでの体感には差があります。平坦に見える区間でも、徒歩や走行では距離の長さがじわじわと効いてくるためです。実際にランニングでイナイチに挑んだ人のブログ記事でも、自転車での周回とは異なる厳しさや達成感が語られています。同じコースでも移動手段によって、まったく違う旅になるということです。ランニングでイナイチに挑む際は、サイクリスト向けの情報を距離感の参考にしつつ、給水と補給の計画は徒歩ペース用に組み直す必要があります。

磐梯山と猪苗代湖を一望できる絶景ポイントは崎川浜と天鏡台

猪苗代湖を周回する魅力のひとつは、走りながら刻々と表情を変える磐梯山を楽しめることです。湖の西岸にある崎川浜は、会津磐梯山を一望できる絶景ポイントとして知られています。冬の晴れた日には、雪化粧をした磐梯山と青く輝く湖面、そして飛来した白鳥が重なる景色が広がり、四季を通じて写真愛好家が訪れる場所です。

磐梯山の南山腹に位置する天鏡台(昭和の森)は、猪苗代湖全体を見渡せる高台のビュースポットで、湖と磐梯山を同時に収められる位置にあります。コースから少し足を延ばす形にはなりますが、休憩がてら立ち寄る価値がある展望地です。猪苗代町の町営磐梯山牧場も見逃せないスポットで、春は牧場に続く公道沿いの桜並木、夏から秋にかけては眼下に広がる田園風景越しに猪苗代湖を望めます。

猪苗代湖は朝日と夕日の名所としても知られています。朝日を狙うなら東側の展望地、夕日を狙うなら西側の景観地が向いているとされ、走る途中で足を止めてカメラを構えるランナーの姿も見られます。

天神浜と長浜は季節ごとに違う顔を見せる湖岸エリア

コース道中にある天神浜は、松林の中に遠浅の砂浜が延々と続くエリアで、長瀬川の河口にできた砂州です。通年開設のオートキャンプ場が併設されており、境内には日本三大天満宮のひとつに数えられる小平潟天満宮があります。例大祭は毎年7月下旬に開かれます。冬の厳冬期、1月下旬から2月上旬にかけては、強い西風にあおられた湖水が樹木に付着して凍りつく「しぶき氷」という珍しい自然現象が見られ、この時期だけの風景を目当てに訪れる人もいます。

国道49号線に面した長浜は、ヨットハーバーや遊覧船の発着場になっている区間です。遠浅で波も穏やかなことから夏は湖水浴でにぎわいます。冬になるとシベリアから飛来した白鳥やカモの越冬地となり、間近で観察できるスポットとして親しまれています。猪苗代湖の白鳥は12月頃から姿を見せ始め、飛来数のピークは2月です。例年およそ3,000羽ほどが越冬し、3月頃には北の空へ帰っていきます。真冬に走る場合は、コース脇で羽を休める白鳥の群れも道中の楽しみになります。

猪苗代湖は磐梯朝日国立公園に属する貧栄養湖

猪苗代湖は周囲56キロメートル、面積103.3平方キロメートル、海抜514メートルに位置し、磐梯朝日国立公園に属しています。湖水は強酸性で、栄養分の少ない貧栄養湖に分類されます。発電所の建設や用水供給のため水位が絶えず変動し、魚の餌になるプランクトンも少ないことから、生息する魚種は20種程度にとどまります。ウグイやギンブナなどコイ科の魚が多く、近年は外来種のオオクチバスも見られるようになりました。

湖に飛来するコハクチョウは、くちばしの先から目もとにかけて黒いのが特徴です。くちばしの半分が黒く体も一回り大きいオオハクチョウとは見分けがつきます。渡来期間は10月から4月と半年以上に及び、日本本土の内陸部ではもっとも標高の高い地点に飛来する群れのひとつとされています。冬の湖畔では、マガモやコガモ、オナガガモ、ホシハジロといったカモ類の姿も見られます。

猪苗代湖一周ランニングの補給ポイントはコンビニ2か所のみ

長距離を一周するコースだけに、事前の補給計画は欠かせません。湖周辺のコンビニエンスストアは西側と北側にそれぞれ1か所程度しかなく、飲食店も湖の南側周辺に集中しています。コンビニとコンビニの間の区間では、エネルギー切れによるハンガーノック、つまり急激な失速に見舞われるリスクがあります。会津若松側は登り基調のうえに補給ポイント自体が少なく、自動販売機すら見当たらない区間もあるため、トラブルが起きた際に対処しづらくなる点には注意が必要です。

一方で、サイクリスト向けに整備された休憩拠点「サイクルステーション」がコース各所に点在しており、トイレ休憩や軽食、カフェ利用ができる場所もあります。ランナーもこうした施設を給水や休憩のポイントとして活用できます。拠点間の距離は決して短くないため、安全に走り切るには、事前にゼリー飲料や補給食を多めに持参し、給水ポイントの位置をあらかじめ把握しておくことをおすすめします。

走るシーズンは空気が澄む秋がもっとも走りやすい

猪苗代・磐梯エリアは高冷地かつ豪雪地帯に属しており、季節によってコースの表情は大きく変わります。春は牧場沿いの桜並木や芽吹き始めた新緑が湖畔を彩り、気温も走りやすい時季です。夏は湖水浴やウォータースポーツで湖岸がにぎわう一方、日差しを遮るものが少ない直線区間が多いため、熱中症対策が欠かせない季節でもあります。

秋は磐梯山や周辺の山々が紅葉に染まり、ゴールドラインなど周辺の観光ルートも合わせて楽しめる時季として人気です。空気が澄み、遠くの山並みまで見渡せる好条件の日が多いことから、長距離ランには最も適したシーズンといえます。冬は、しぶき氷や白鳥の飛来といった猪苗代湖ならではの風物詩が楽しめる一方、路面の凍結や積雪、湖畔特有の強い季節風への備えが必須です。豪雪地帯という土地柄をふまえ、冬季に走る場合は事前の道路状況確認を欠かさないようにしたいところです。

50キロを超える長距離を、日差しを遮るものが少ない湖岸道路で走り抜けることになるため、装備選びは完走を左右します。夏場は帽子やサングラス、日焼け止めに加え、こまめな塩分補給ができるタブレットや飲料を携行したいところです。休憩ポイントが限られる区間があることをふまえ、ハイドレーションパックやランニングポーチなど、水分と補給食をまとめて持ち運べる装備があると安心です。冬場に挑戦する場合は、路面凍結や積雪、湖上から吹き付ける強風への対策が欠かせません。防風性のあるウェアやグローブ、耐滑性のあるシューズを選び、日照時間が短くなる時季は早めのスタートを心がけたいものです。

水分補給は、喉が渇いてから飲むのではなく、少しずつこまめに口にする進め方が有効とされています。スポーツドリンクは糖質濃度がおおむね2.5パーセント以下、塩分濃度が0.1パーセント程度のものが体への吸収速度が速いといわれており、市販のスポーツドリンクを薄めて携行するランナーもいます。長時間の運動では消化管への負担で補給が思うように進まないこともあるため、固形の補給食とゼリー飲料を組み合わせ、胃の状態に合わせて使い分ける工夫も役立ちます。

練習は隔週の距離走と休養の両立が完走の近道

60キロ弱を走り切るには、レースまでの練習の組み立てが大きく影響します。ウルトラマラソンの練習法として、レース距離の半分ほどの距離を隔週で走り込む考え方が一般的に紹介されています。猪苗代湖一周であれば、まず40キロ前後から距離を伸ばし始め、月間の走行距離を200キロから250キロ程度確保していく積み上げ方が現実的です。長い距離を走った日は身体への負担が大きいため、次の距離走までは2週間以上の間隔を空け、休養をしっかり取ることも欠かせません。

ペース配分では、序盤に貯金を作りすぎない組み立てが推奨されています。50キロ地点を全体時間の46パーセントほどで通過できれば、後半に余裕を残しやすくなります。後半が前半よりゆっくりになっても構わないという前提で計画を立てておくと、無理な失速を防げます。休憩やエイドでの立ち止まりも、うっかり長引くとタイムに響くため、短く区切る意識を持っておきたいところです。

アクセスは磐越西線の猪苗代駅と川桁駅が起点

猪苗代湖は福島県のほぼ中央、会津若松市、郡山市、猪苗代町にまたがって位置しています。公共交通機関を使う場合は、JR磐越西線の猪苗代駅や川桁駅が最寄りです。周回コースのスタートとゴールを設定する場合、駐車場やトイレ、更衣スペースが整っている道の駅や公園を起点にすると計画が立てやすくなります。長浜周辺や天神浜周辺には観光客向けの駐車スペースが確保されているエリアもあり、車でアクセスして荷物をデポしてから走り始めるランナーもいます。

猪苗代・磐梯エリア全体で見ると、最低地点である湖面の標高514メートルから、最高地点の東吾妻山1,974.7メートルまで標高差は1,460メートルに及びます。周回コース自体は湖岸沿いのため大きな標高変化はありませんが、エリア全体としては起伏に富んだ地形であるため、天候や気圧の変化にも注意しておきたいところです。

猪苗代湖と磐梯山を巡る本格レースは会津磐梯山ウルトラマラソン

猪苗代湖とその周辺エリアでは、実際に大会として周回・巡回コースを走るイベントも開催されてきました。代表的なものが会津磐梯山ウルトラマラソンで、猪苗代湖に加えて小野川湖、秋元湖、檜原湖、曽原湖という5つの湖を巡りながら、磐梯山の麓をぐるりと一周する本格的なウルトラマラソン大会です。スタートとゴールにはカメリーナが使われ、距離設定は100キロ、65キロ、45キロなど複数用意されており、猪苗代町、磐梯町、北塩原村の3町村を舞台に開催されています。2024年6月16日に開かれた第3回大会では、出走者246名に対し完走者143名、完走率58.1パーセントという結果でした。この数字からも、走りごたえの大きさがうかがえます。

このほかにも「猪苗代湖マラソン」という大会名がランナー向け大会情報サイトに掲載されており、地域を挙げてランニングイベントが根付いていることがわかります。大会に出場せずとも、個人でイナイチを走破するランナーは多く、SNSやブログには完走記録や体験談が数多く投稿されています。

野口英世記念館は磐梯山と猪苗代湖を望む休憩スポット

コース沿いには、走りながら気分転換に立ち寄れる観光施設もあります。代表格が、北に磐梯山、南に猪苗代湖を望む地に建つ野口英世記念館です。1876年に猪苗代町で生まれ、黄熱病の研究中に自らも感染し51歳で世界を去った医学者・野口英世の生涯と功績を紹介する施設で、館内には彼が幼少期にやけどを負った囲炉裏や、上京する際の決意を刻んだ床柱がそのまま残る生家も保存されています。平成27年(2015年)のリニューアルでは、ゲーム感覚で細菌の世界を学べる「体験バクテリウム」のコーナーが新設されました。令和4年(2022年)には「野口英世記念感染症ミュージアム」も併設されています。

福島県のホームページや猪苗代観光協会の公式サイトでは、猪苗代湖一周がサイクリングロードとして紹介されており、湖畔の白鳥浜近くの旧セブンイレブン付近から野口記念館までの約3.6キロメートルには、田園地帯やそば畑の中を抜ける専用の自転車道も整備されています。この自転車専用道が野口記念館までを結んでいることもあり、ランニング中の休憩ポイントとしても好立地です。

猪苗代湖一周ランニングは事前の補給計画で完走率が変わる

猪苗代湖を一周するランニングコースは、日本第4位の広さを誇る湖と、会津富士と称される磐梯山の景観を、自分の足で丸ごと体感できるロングランフィールドです。距離はおよそ55キロから60キロに及び、フルマラソンを超えるウルトラランニングの領域に踏み込む挑戦になりますが、崎川浜や天鏡台、天神浜、長浜といった湖畔の名所を巡りながら、季節ごとに変化する自然の表情を楽しめる点が魅力です。

一方で、補給ポイントの少なさや会津若松側の登り区間、夏の暑さや冬の積雪といった注意点も多く、事前の情報収集と装備、補給の計画が完走の鍵を握ります。自転車のロングライドコース「イナイチ」として先に知られてきた道でもあるため、サイクリング向けの情報を距離感の参考にしつつ、ランナーならではのペース配分で挑むことをおすすめします。会津磐梯山ウルトラマラソンのような公式大会に出場するのもよいですし、個人で自分のペースを刻みながら周回するのもよいでしょう。猪苗代湖と磐梯山が織りなす景色を胸に刻む一日は、記憶に残るランニング体験になるはずです。

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