宮崎市の一ツ葉海岸に広がるフェニックス・シーガイア・リゾートの周辺には、黒松林の中を走れるランニングコースが整備されています。隣接する阿波岐原森林公園を1周する松林コースは距離が約5.2キロメートルで、5キロ前後を走りたいランナーに向いた周回路です。海からの風と日差しを松林が和らげてくれるため、季節を問わず走りやすい環境が整っているのが大きな特徴といえます。この記事では、シーガイア周辺にある松林のランニングコースについて、距離やコースの特徴、松林が育った背景、周辺サービス、アクセス方法までをまとめます。

一ツ葉海岸の黒松林はおよそ200年前に植栽された防風林
一ツ葉海岸の黒松林は、およそ200年前に地域住民の暮らしを潮風や強風、飛砂の害から守るために植栽されたと伝えられています。南北約11キロメートル、幅約1キロメートルにわたって広がるこの松林には100万本以上の黒松が生育しており、防風と防潮の役割を果たしながら、訪れる人に安らぎを与える存在になっています。一ツ葉海岸松林そのものは宮崎市の佐土原、住吉、前浜の各地区にまたがって所在し、平均幅0.45キロメートル、長さ約10キロメートル、面積は413ヘクタールに及びます。松の樹齢は1年から160年までと幅広く、長い年月をかけて世代交代しながら維持されてきた保安林です。
黒松からは「フィトンチッド」と呼ばれる樹木由来の揮発性物質が放出されており、殺菌作用や心身の緊張がやわらぐ働きがあるとされています。有酸素運動であるランニングやウォーキングを森林の中で行うと、こうした働きをより実感しやすいといわれており、松林コースが景観の良さだけでなく、心身のコンディションを整える場としても選ばれる理由のひとつになっています。森林浴という言葉が示すとおり、樹木に囲まれた空間で身体を動かすこと自体が、屋内のトレーニングとは違う開放感につながります。
一ツ葉海岸のような海岸沿いの松林は、日本各地で「海岸防災林」と呼ばれる保安林として整備されてきました。海岸の砂地を森林で覆うことで飛砂の発生を抑え、内陸部の土地利用や住民の暮らしを守るとともに、津波や高潮の際には樹幹が波のエネルギーを弱め、林冠が潮風による塩害を防ぐ役割も担っています。全国のクロマツ林の多くはこうした防災機能を目的に植えられており、宮崎の松林も例外ではありません。1987年には美しい砂浜と松原を併せ持つ景勝地として、全国から100か所の海岸が「日本の白砂青松100選」に選ばれており、白砂青松という言葉自体、こうした海岸林の景観を指す呼び名として全国的に定着しています。ランナーにとって走りやすい環境が、もともとは防災と暮らしを守るための植林から生まれてきたという背景を知っておくと、コースの見え方も少し変わってくるかもしれません。
フェニックス・シーガイア・リゾートは1994年10月に全面開業
フェニックス・シーガイア・リゾートは、総合保養地域整備法、いわゆる「リゾート法」の第1号指定を受けて建設された大規模リゾート施設です。1988年に佐藤棟良によって設立が進められ、建設にあたっては、もともと防風林として植樹されていた海岸部の松林の一部を伐採して整備が進められた経緯があります。1993年7月にはオーシャンドームやゴルフコースなど5つの施設が一部開業し、1994年10月に全面開業を迎えました。現在ではホテル、ゴルフ場、温泉、スパ、MICE施設などを備える九州有数の総合リゾートとして知られており、周辺に広がる松林エリアはリゾート利用者だけでなく、地域住民のランニングやウォーキングの場としても親しまれています。
リゾート開発と自然環境の保全は、ともすれば対立しがちなテーマです。シーガイアの場合は松林の一部を切り開いて施設を整備した一方で、大部分の松林は保安林として残され、結果的にリゾート施設と森林ランニングが同じエリアに共存する形になりました。この組み合わせが、宿泊しながら本格的なトレーニングもできるという、他の観光地にはあまり見られない特徴を生んでいます。
シーガイア周辺のランニングコースは距離別に3種類
シーガイア周辺には距離の異なる複数のランニングコースが用意されており、初心者向けから本格的なトレーニング向けまで、目的に応じて選べるのが魅力です。おおむね2キロメートルほどの短いコースから、最長で9.5キロメートル前後に及ぶコースまでが黒松林の中にレイアウトされています。
代表的な3コースの特徴を整理すると、次のようになります。
| コース名 | 距離の目安 | 特徴 |
|---|---|---|
| 短距離コース | 約2キロメートル | 初心者やウォーキング利用に向く |
| 松林コース(阿波岐原森林公園) | 約5.2キロメートル | 平坦に近く、5キロ走の練習に向く |
| シーガイア外周コース | 約9キロメートル | 適度なアップダウンがあり、距離走向き |
外周コースは1周約9キロで距離走に向く
シーガイア外周コースは、シーガイアの敷地外周をぐるりと1周するコースです。距離はおよそ9キロメートルで、コース全体が黒松林に沿ったロードとなっており、適度なアップダウンも含まれるため、距離走やペース走など負荷の高いトレーニングにも向いています。長い距離を踏みたい日や、起伏のある実戦的なコースで脚力を鍛えたい日に選ばれることが多いコースです。
松林コースは阿波岐原森林公園を囲む1周5.2キロの周回路
中でも中心となる松林コースは、シーガイアに隣接する宮崎県立阿波岐原森林公園の外周をとりまく松林の中を走る周回コースです。1周の距離はおよそ5.2キロメートルで、日向灘に面した一ツ葉海岸に位置し、園内の大部分が松林に覆われた「白砂青松」の風光明媚な地として知られています。白砂青松とは、白い砂浜と青々とした松林が織りなす日本の海岸景観を指す言葉で、一ツ葉海岸はその代表的な例のひとつに数えられます。
松林が海からの強い風と紫外線をやわらげてくれるため、風の影響を受けにくく、夏の暑い時期のトレーニングにも適しています。コース自体に大きな急勾配はないものの緩やかな起伏があり、景色の変化が少なく単調な部分もあるため、タイムやフォームなど明確な課題を持って黙々と練習に打ち込みたいランナーには特に向いているコースだといえます。5キロメートル前後という距離感は、5キロのタイムトライアルや、ウォーミングアップを含めた周回練習、初めて松林ランを体験する人にもちょうど良い長さです。
阿波岐原森林公園自体は南北約10キロメートルに及ぶ広大な森林公園で、そのうち約30ヘクタールが「市民の森」として整備され、休憩所や花壇、散策路なども設けられています。ランニングの合間に一息つける休憩スポットが点在しているのも、この松林コースの使いやすさにつながっています。
松林コースは2010年にアジア初のAIMS国際認定を取得
シーガイア周辺のランニングコースは、その美しい自然環境と、歩行者やランナーにとって安全な整備状況が評価され、2010年10月にAIMSの認証を受けました。AIMSは国際マラソン・ディスタンスレース協会の略称で、世界各地のマラソンやロードレースの主催団体が加盟する国際組織です。1982年に国際マラソン協会として設立され、その後1987年に国際マラソン・ロードレース協会、2007年に現在の国際マラソン・ディスタンスレース協会へと名称を変えながら、コースの距離計測や大会運営の基準づくりに携わってきました。世界陸連(ワールドアスレティックス)とも連携しながらロードレースの信頼性を担保する役割を担っており、110を超える国や地域の大会運営組織が加盟する規模の団体です。シーガイア周辺のコースは、このAIMSからアジアで初めての国際認定コースとして評価されました。
このリゾートエリアには初心者向けから本格的なトレーニングに対応するコースまで3種類が用意されており、体力レベルや目的に応じてコースを選択できる点も評価されています。国際的な認証を受けたコースが身近に存在することは、市民ランナーにとっても、大会に向けた合宿地を探すチームにとっても大きな安心材料になっています。
SEAGAIA RUN PORTはロッカーとシャワーを500円で使えるサービス
2019年10月1日、フェニックスリゾート株式会社は、リゾート・ランをより快適にするための新サービス「SEAGAIA RUN PORT」の提供を開始しました。これはロッカーとシャワールームを1回500円で利用できるサービスで、リゾートの宿泊者だけでなく、日帰りで訪れるビジターも利用できます。
利用の流れは、まず各フロントで受付を行い、精算後にロッカーキーを受け取ります。更衣室で着替えを済ませ、荷物をロッカーに預けたらランニングをスタートし、走り終えたらシャワーでさっぱりしてから、フロントにロッカーキーを返却するという手順です。なお、ランニングを伴わずロッカーや入浴施設のみを目的とした利用はできない点、またロッカー数に限りがあるため混雑時には利用できない可能性がある点には注意が必要です。事前に施設へ問い合わせておくと安心して利用できます。遠方から公共交通機関で訪れるランナーや、荷物を軽くして走りたい日帰りランナーにとって、着替えとシャワーの環境が整っていることは大きな利点であり、これが5キロ、10キロといった距離を気軽に楽しめる土台になっています。
大学・実業団の合宿地に選ばれる理由は平坦な地形と温暖な気候
シーガイア周辺は、多くの大学陸上部や実業団の駅伝・マラソンチームがトレーニング合宿の地として選んできた実績があります。その理由としてまず挙げられるのが、約700ヘクタールにも及ぶ黒松林に囲まれた、平坦で走りやすいコース環境です。長距離練習や距離走に取り組む際、路面のアップダウンが少なく、松林によって風がやわらげられている環境は、安定したペースでの走り込みに向いています。
加えて、黒松から放出されるフィトンチッドによる殺菌作用や疲労回復につながる働き、そして温暖な気候によって年間を通じてトレーニングを行いやすい点も、合宿地として選ばれる要因になっています。美しい自然環境の中で走ることができ、さらに2010年にはアジア初の国際認定コースとしての実績も加わったことで、合宿地としての評価は高まっています。宿泊施設や温泉、リカバリー施設が同じリゾート内に揃っていることも、コンディション管理を重視するトップアスリートのチームにとって魅力的なポイントです。
宮崎シーガイアジョギング・ユニファイド大会は2026年4月19日開催
松林コース周辺では、市民参加型のランニングイベントも開催されています。「宮崎シーガイアジョギング・ユニファイド大会」はその代表例で、2026年に開催された第41回大会は4月19日の日曜日に、雨天決行のもと実施されました。この大会の大きな特徴は「ユニファイド」の部が設けられている点で、障がいのある人もない人も一緒に参加できる種目が用意されています。
ジョギング種目には2キロメートル、5キロメートル、10キロメートル、ハーフマラソンの各距離が用意されていたほか、約8.5キロメートルのウォーキングやノルディックウォーキングも実施されました。花と松林に囲まれたコースを、潮風を感じながら走ったり歩いたりできる大会として、地元住民や県外からの参加者にも親しまれています。会場は国際海浜エントランスプラザ多目的広場で、フローランテ宮崎の南側、サッカー場付近にあたります。申し込みは公式サイトから行う仕組みになっています。5キロメートル種目が用意されていることからもわかるとおり、松林コースの5キロという距離は、大会のレギュラー距離としても定着しています。
宮崎は1月でも最高気温13度前後の温暖な気候
宮崎県は海洋性気候に属し、年間を通じて温暖な気候が特徴です。平均気温は全国でも上位に入り、日照時間の長さでも全国有数とされています。宮崎市内では1月が最も寒い時期にあたりますが、それでも最高気温は13度前後、平均気温は7.8度程度と、全国的に見ればかなり高めの水準にとどまります。冬場は晴れの日が多く、日差しの強い日も少なくありません。1月であっても最高気温が10度を超える日が多く、日照時間も長いため、冬場のトレーニングにも適した環境だといえます。
一方で、松林コースは海に近い立地のため、真夏は日差しをやわらげてくれる松林の木陰がありがたく、真冬は比較的穏やかな気候の中で走り込みができるという、季節を問わず走りやすい特性を持っています。ただし宮崎県内でも山間部との気温差は大きく、松林コース周辺と内陸部とでは服装の調整が必要になる場合がある点は留意しておきたいところです。
九州南部は冬場の気候が比較的穏やかなことから、陸上競技に限らず多くのスポーツチームが冬季の強化合宿地として選ぶ地域でもあります。シーガイア周辺もその流れの中にあり、雪や凍結の心配をせずに屋外での走り込みを続けられる点は、寒冷地のチームにとって特に価値の高い条件になっています。夏場は日本各地が高温多湿になりますが、松林コースは木陰が多いぶん直射日光を避けやすく、真夏のトレーニングでも比較的走りやすい部類に入るコースだといえるでしょう。
宮崎空港からシーガイアへは直行バスで約25分
シーガイア、そして隣接する阿波岐原森林公園の松林コースへは、宮崎空港および宮崎駅からのアクセスが便利です。宮崎空港からフェニックス・シーガイア・オーシャンタワーへは直行バスで約25分というのが最も効率的なルートです。電車とバスを組み合わせる場合は、宮崎空港駅から宮崎駅までJRで約10分、宮崎駅からバスに乗り換えてシーガイアまでさらに約23分ほどかかり、全行程ではおよそ40分程度を見込んでおくとよいでしょう。宮崎駅からシーガイアまでバスのみを利用する場合も、所要時間はおよそ23分です。空港からも市街地からもアクセスしやすい立地であることは、遠方から合宿や旅行を兼ねてランニングに訪れる人にとって大きな利点になっています。
松林コースを走る際は休憩ポイントと風向きの把握が鍵
松林コースを実際に走る際にいくつか押さえておきたいポイントがあります。まず、コースは単調な周回であるがゆえに、給水や休憩のタイミングを自分で計画しておくことが大切です。阿波岐原森林公園内には休憩所が点在しているため、5.2キロメートルの周回の中でどこに休憩ポイントがあるかを事前に把握しておくと、初めて走る場合でも安心してペース配分ができます。
次に、松林の中は日陰が多く快適に感じられる一方、海に近いエリアのため、風の強い日にはコース区間によって向かい風と追い風の差が出やすくなります。5キロメートルという距離であっても、風向きによって体感的な負荷が変わることを念頭に置いてペースを調整するとよいでしょう。初めて訪れる場合は、最初の1周をゆっくり走って風の当たりやすい区間を把握し、2周目以降のペース配分に生かすという走り方も有効です。
また、SEAGAIA RUN PORTのようなロッカーとシャワーのサービスを活用すれば、公共交通機関で訪れた日帰りランナーでも身軽に走ることができます。走った後にシャワーで汗を流し、着替えてから移動できるのは、旅行や出張の合間に走りたい人にとって特にありがたい環境です。事前に予約や混雑状況を確認しておくと、当日スムーズに利用できます。
松林コースはどのくらいの時間で走れるのかという疑問を持つ人も多いはずです。5.2キロメートルという距離は、キロ5分から6分ほどのペースで走った場合、およそ26分から31分程度で1周できる計算になります。ジョギングペースであれば35分前後を見込んでおくと無理がありません。初めて走る場合は、時計やスマートフォンのアプリで自分のペースを確認しながら、無理のない範囲で周回数を調整するとよいでしょう。
5キロメートルの周回コースはリピートしやすい距離設定
宮崎・シーガイアの松林コースは、およそ200年前から地域を守り続けてきた黒松林の中を走る、他にはない魅力を持つランニングコースです。阿波岐原森林公園を囲む1周5.2キロメートルの周回路は、海風と紫外線を松林がやわらげてくれるため、夏でも冬でも走りやすく、5キロメートル前後の距離を楽しみたいランナーに適した環境が整っています。2010年にはアジア初となるAIMS国際認定コースとしての実績も加わり、大学や実業団の合宿地として選ばれ続けているほか、市民参加型のジョギング大会の舞台としても親しまれています。
ロッカーやシャワーを利用できるSEAGAIA RUN PORTのようなサービスも充実しており、宿泊者はもちろん日帰りのビジターにとっても訪れやすい環境です。宮崎空港や宮崎駅からのアクセスも良好で、旅行や出張のついでに立ち寄りやすい立地である点も見逃せません。黒松林に囲まれた空間で、5キロメートルの周回コースをのびのびと走る体験は、宮崎ならではのランニングの楽しみ方のひとつになっています。次に宮崎を訪れる機会があれば、ランニングシューズを荷物に加えてみてはどうでしょうか。








