千代川沿いを周回するランニングコースは、鳥取市内で信号待ちがほとんど発生しないまま約22kmを走り抜けられる、本格的な河川敷コースです。最大の見どころは、川沿いを走りながら霊石山のフライトエリアから飛び立つパラグライダーやハンググライダーを見上げられる点にあります。ペース走やLSD(ロング・スロー・ディスタンス)など、まとまった距離を踏みたいランナーにとって、交差点の少ない河川敷は練習の場として都合がよく、地元の陸上競技愛好者やマラソンランナーに長く親しまれてきました。この記事では、コースの距離や特徴、パラグライダーの絶景が楽しめる霊石山の情報、桜並木や周辺施設、鳥取マラソンとの関わりまで、走る前に押さえておきたい情報をまとめます。

千代川沿い周回コースの距離は片道換算で約22km
「走ろうにっぽんプロジェクト」が紹介する千代川沿いの周回コースは、距離にして約22kmという本格的なロングコースです。千代川の河川敷は人気のランニングスポットとして知られており、川沿いからは季節ごとに色合いを変える山々を見渡せます。中でも際立つのが、標高334mの霊石山です。スカイスポーツのメッカとして知られるこの山の山頂から、パラグライダーやハンググライダーが次々と飛び立ちます。空を舞う機体を眺めながら走れることが、このコースを他の河川敷コースと分ける最大の特徴です。
22kmという距離は、フルマラソン(42.195km)のおよそ半分にあたります。往復や周回の組み合わせ方を工夫すれば、ハーフマラソン相当の距離はもちろん、それ以上の走り込みにも対応できるでしょう。さえぎるものが少ない河川敷は、風向きや天候の変化に気づきやすい環境でもあり、季節の移ろいを感じながら走れる点も魅力のひとつです。
ペース走とLSDに向いた河川敷特有の走りやすさ
信号待ちがほとんど発生しない河川敷特有の走りやすさは、タイムを意識したペース走や、長時間同じリズムを保つLSDトレーニングと相性がよい環境です。交差点で足を止める必要がないぶん、設定したペースを最後まで崩さずに走り切りやすく、心拍数を一定に保つトレーニングにも向いています。距離走で30kmを超えるロング走を計画するランナーであれば、コースを往復したり複数回周回したりすることで、走行距離を柔軟に調整できます。
千代川は智頭町沖ノ山を水源に鳥取市で日本海へ注ぐ一級河川
千代川は、鳥取県東部を流れる一級水系「千代川水系」の本流です。八頭郡智頭町の沖ノ山付近を水源とし、智頭町、八頭町、若桜町などを経て北へ流れ、鳥取市内で日本海に注ぎます。流域面積はおよそ52,100ヘクタールにおよび、そのうち26,000ヘクタールが国管理の区間です。河口付近には鳥取砂丘に代表される砂丘地形が広がり、鳥取市用瀬地区は「流し雛」で知られるなど、千代川は鳥取県の歴史や文化と深く結びついてきた川です。
河川整備基本方針は2006年4月に策定
2006年4月には河川法に基づく「河川整備基本方針」が策定され、国土交通省によって100年先を見据えた河川整備が継続的に進められています。鳥取河川国道事務所が千代川水系の整備と管理を担当しており、治水対策や河川環境の保全とあわせて、河川敷の利活用にも取り組んでいます。こうした整備が積み重ねられてきたことで、河川敷は市民のランニングやウォーキング、サイクリングの場として広く活用されるようになりました。
霊石山は標高334mで西日本屈指のフライトエリア
千代川沿いランニングコースのハイライトのひとつが、河原町の東方、因幡地方の中央にそびえる霊石山(標高334m)です。「高さ」「眺望」「気流」の3拍子がそろった絶好のフライトエリアとして知られ、全国からスカイスポーツの愛好者が集まる、西日本屈指のハンググライダー・パラグライダー基地を山頂に有しています。日本海から吹き込む風が上昇気流となるため、年間を通じてフライトが楽しめる立地であることも、この場所が人気を集める理由のひとつです。
休日ともなれば、色とりどりのパラグライダーやハンググライダーが山頂上空を飛び交い、大きな賑わいを見せます。千代川の河川敷を走りながらこの光景を眺められるのが、このランニングコース最大の見どころといってよいでしょう。空を舞うカラフルな機体は遠くからでもよく目立ち、単調になりがちな河川敷ランニングに彩りと変化を与えてくれます。
霊石山山頂からは鳥取砂丘と日本海まで一望できる
霊石山山頂からは、眼下に鳥取平野と千代川、北の方角には鳥取市街地や鳥取砂丘、日本海までを一望できます。さらに遠くには、氷ノ山や那岐山といった中国山地の山々を望むこともできます。山頂へは徒歩・車のどちらでもアクセス可能で、舗装路も整備されているため、登山道を使わずに車で山頂まで到達することもできます。JR鳥取駅から日ノ丸バスの智頭行きに乗り約20分、「稲常」バス停で下車後、登山口まで徒歩約15分というアクセスルートもあります。
霊石山には中腹から山頂にかけて、最勝寺、御子岩、一本松、源範頼の墓、三十三体観音、奥ノ院の鐘楼、城跡、展望台、伊勢ヶ平など、歴史と伝説に彩られたスポットが点在しています。ランニングの合間や休息日に、こうした史跡を巡るハイキングを組み合わせるのもよいでしょう。パラグライダーの飛行を間近で見学したいときは、山頂のフライトエリアまで足を延ばしてみると発見があります。
霊石山フライトフェスティバルは毎年10月開催
霊石山のフライトエリアは、地元自治体である鳥取市河原町総合支所地域振興課が所管しており、山頂の離陸場には案内看板や設備が整えられています。毎年10月には、着陸地点の精度を競う全国大会「霊石山フライトフェスティバル」が開催されており、全国からスカイスポーツ愛好者が集うこのエリアの盛り上がりを象徴するイベントです。大会が開催される時期に河川敷を走ると、ふだん以上に多くのパラグライダーやハンググライダーが山頂上空を舞う様子を眺められます。ランニングの合間に足を止めて空を見上げたくなる場面に出会えるでしょう。
タンデムフライト体験の料金相場は13,000円前後
河川敷から眺めるだけでなく、実際にパラグライダー体験に挑戦してみたいランナーもいるでしょう。霊石山(高さ約300m)でのフライトは、鳥取砂丘から車で20分ほどの場所にあり、初心者から本格的なフライトに挑戦したい人まで対応するタンデムフライト(インストラクターと2人乗りで行う体験飛行)が用意されています。タンデムフライトの料金相場はおおむね13,000円前後で、パイロットが操縦するため未経験者でも大空からの絶景を楽しめます。千代川の河川敷を走りながら見上げていたパラグライダーに、今度は自分が乗って千代川と鳥取平野を見下ろすという楽しみ方もできます。
千代川沿いの桜並木は約2kmにわたる桜のトンネル
千代川沿いには、約2kmにわたって桜並木が続く区間があり、遊歩道が整備された見事な「桜のトンネル」として地元でも人気のお花見スポットになっています。JR鳥取駅から徒歩10分ほどでアクセスできる立地のよさもあり、開花シーズンにはボンボリが点灯され、川面に映る夜桜を楽しむこともできます。ランニングコースとしての利用がメインシーズンを外れる春先には、桜を眺めながらのジョギングやウォーキングを楽しむ市民の姿も多く見られます。
このほか、鳥取市内では湖山池に浮かぶ青島が、菜の花と桜を同時に楽しめるスポットとして知られています。千代川流域全体で見ると、春先は花を楽しみながらのランニング、初夏から秋にかけては新緑や紅葉、そして年間を通じて霊石山のパラグライダーを眺めるランと、季節ごとに異なる表情を楽しめるのが、このエリアで走り続ける理由のひとつです。
千代河原市民スポーツ広場は野球場2面など多目的施設が集まる拠点
千代川の河川敷内には「千代河原市民スポーツ広場」と呼ばれる公共のスポーツ施設が整備されています。野球専用の多面式グラウンドをはじめ、複数の競技施設を備えた広大な運動施設で、JR鳥取駅からは徒歩約17分、最寄りの千代橋バス停からは徒歩約5分でアクセスできます。ランニングコースの途中に位置しているため、休憩ポイントやコースの目印としても利用しやすい立地です。
| 施設 | 面数 |
|---|---|
| 野球場 | 2面 |
| ソフトボール場 | 2面 |
| グラウンドゴルフ場 | 2面 |
| ゲートボール場 | 10面 |
野球やソフトボール、グラウンドゴルフなど、河川敷では地域住民によるさまざまなスポーツ活動が日常的に行われており、ランナーだけでなく多世代の市民に親しまれているエリアです。
市民納涼花火大会は2026年8月15日開催で今年73回目
この千代河原市民スポーツ広場は、毎年8月15日に開催される「市民納涼花火大会」の会場としても知られています。2026年は8月15日(土)の開催が予定されており、この花火大会は1953年に鳥取市が周辺14村と合併した記念、および大正時代に3度にわたって氾濫した千代川の大改修工事にちなんだ「千代川感謝祭り」を起源とし、現在では鳥取市最大の夏祭り「鳥取しゃんしゃん祭」のフィナーレを飾る、約7000発の花火が打ち上げられる大規模なイベントに発展しました。2026年は第73回大会にあたり、「For You, For Tottori.」をテーマに開催される予定です。このほか、上流の河原町エリアでは毎年8月に「あゆ祭り」が開催されており、あゆのつかみ取りや大抽選会、夜空を彩る花火大会でにぎわいます。ふだんは静かな河川敷ランニングコースも、夏には多くの人でにぎわう地域の一大イベント会場に姿を変えるのです。
鳥取マラソン2026は2026年3月15日に開催されました
千代川沿いは、鳥取県を代表するマラソン大会「鳥取マラソン」とも関わりが深いコースです。鳥取マラソン2026は2026年3月15日(日)に開催され、午前9時スタート、午後3時競技終了(制限時間6時間)というスケジュールで実施されました。コースは「鳥取砂丘山陰海岸・因幡万葉の里マラソンコース」と呼ばれる日本陸上競技連盟公認コースで、スタート地点は鳥取砂丘、フィニッシュはコカ・コーラウエスト鳥取スポーツパーク(陸上競技場)というワンウェイコースです。鳥取砂丘から鳥取城跡、仁風閣、万葉の里など、鳥取市の史跡名勝を巡りながら42.195kmを走り抜けるコース設定になっています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 開催日 | 2026年3月15日(日) |
| スタート時刻 | 午前9時 |
| 競技終了時刻 | 午後3時(制限時間6時間) |
| スタート地点 | 鳥取砂丘 |
| フィニッシュ地点 | コカ・コーラウエスト鳥取スポーツパーク(陸上競技場) |
鳥取マラソンは完走率の高さで知られ、初めてフルマラソンに挑戦するランナーにもすすめられる大会です。一級河川である千代川に沿って下流を目指す区間が含まれており、大会当日以外にも、日頃から千代川沿いを走り込んでおくことは、本番のコース感覚をつかむうえで有効な準備になります。普段のトレーニングの舞台である河川敷が、そのまま大会本番のコースの一部と重なっているのは、地元ランナーにとって心強いポイントです。
鳥取マラソンのフィニッシュ地点となっているのは、鳥取市布勢にあるコカ・コーラウエスト鳥取スポーツパーク陸上競技場(鳥取県立布勢総合運動公園)です。天然芝グラウンドを備えた400メートルトラックと約18,000人収容の観客席を持ち、1985年開催の国体ではメインスタジアムとしても使用された、鳥取県を代表する総合運動場です。JR鳥取駅から車でおよそ15分、湖山駅から徒歩でもアクセスできる立地にあり、千代川沿いのランニングコースとあわせて、大会当日の走行イメージを事前につかんでおく拠点としても活用できます。
河川敷ランニングは信号待ちが少ない一方で熱中症対策が必須
千代川河川敷のような大河川沿いのコースには、市街地のランニングにはないメリットがあります。信号待ちがほとんど発生しないため一定のペースを維持しやすく、ペース走やインターバル走のような負荷の高いメニューにも取り組みやすい環境です。視界を遮る建物が少なく開放的なので、長時間走り続けても圧迫感が少なく、路面も比較的フラットな区間が多いため、膝や足首への負担を抑えながら距離を踏みたいランナーにも向いています。
増水後は路面状況の確認が欠かせません
遮るものが少ない河川敷は、季節や時間帯によっては強い風の影響を受けやすく、夏場は日差しを遮る場所が少ないため熱中症対策が欠かせません。冬場は日本海側特有の冷たい風が吹き抜けるため、防寒対策をしたうえで走ることが望ましいでしょう。増水時や大雨の後は河川敷が冠水したり、路面がぬかるんだりすることがあるため、事前に河川の状況を確認してから出かける必要があります。夜間走行の際は照明が少ない区間もあるため、反射材やライトを携行するなど安全対策を心がけたいところです。
路面がフラットな河川敷は、下り坂や不整地に比べて着地の衝撃が一定になりやすく、膝や足首まわりを痛めにくいという声もよく聞かれます。とはいえ同じ路面を長時間走り続けると、決まった筋肉ばかりに負担が集中しやすい面もあります。走る向きを途中で切り替えたり、休憩を挟んでストレッチを行ったりすることで、疲労の偏りを抑えながら距離を踏むことができるでしょう。給水についても、河川敷は自動販売機やコンビニが少ない区間があるため、走る前に水分を用意しておくと安心です。
アクセスはJR鳥取駅から徒歩10分圏内で他コースとも組み合わせ可能
千代川沿い周回コースの起点としては、JR鳥取駅からのアクセスのよさが挙げられます。桜並木区間は鳥取駅から徒歩約10分とされており、河川敷への入り口として利用しやすい立地です。市街地から近い距離にありながら、走り出せばすぐに開放的な河川敷の風景が広がる点は、都市近郊ランニングコースとしての利便性の高さを示しています。
鳥取市内には千代川以外にも、鳥取砂丘を眺めながら走る自転車道コースなど、走ろうにっぽんプロジェクトで紹介されているコースが複数存在します。千代川沿いの周回コースとあわせて、砂丘方面のコースや鳥取うみなみロード(とっとり横断サイクリングルート)といった県内の他コースを組み合わせることで、より多彩なトレーニングメニューを組むことも可能です。鳥取うみなみロードは令和2年3月22日に全線開通し、ナショナルサイクルルートの指定を目指して走行環境の整備や受け入れ環境の充実が進められています。ランニングだけでなくサイクリングにも力を入れているエリアであることがうかがえます。
トレーニングメニューは距離設定次第でLSDにもビルドアップ走にも対応
千代川沿い周回コースの距離は約22kmとされているため、目的に応じて走る距離を調整しやすいのも利点です。フルマラソンを目指すランナーであれば、コースを1周してLSDのロング走メニューとして活用したり、折り返し地点を設定してペース走の距離を管理したりする使い方ができます。ハーフマラソンを目標にするランナーは、コースの半分程度を目安にビルドアップ走を行うなど、走力やレースの目標に合わせて柔軟にメニューを組めるでしょう。
河川敷は起伏が少なくフラットな区間が中心のため、スピード練習よりも一定ペースを刻む練習や、距離を踏むことを重視した練習に向いています。霊石山のパラグライダーを目印にしながら走ることで、距離感覚をつかみやすくなるという楽しみ方もできます。単調になりがちな長距離走を、空を舞うパラグライダーやハンググライダーという動きのある景色が変化として彩ってくれる点は、練習を続けるうえで見逃せないポイントです。
LSDは、会話ができる程度のゆっくりとしたペースで長時間走り続け、脂肪をエネルギーとして使う力や毛細血管のはたらきを高めることを目的としたトレーニングです。心拍数を上げすぎずに距離を踏むため、平坦で走りやすい千代川の河川敷は理想的な舞台になります。一方のペース走は、レースの目標タイムに近いペースを一定時間保つ練習で、信号や交差点で流れが途切れやすい市街地よりも、河川敷のような遮るもののないコースのほうが実施しやすいトレーニングです。ビルドアップ走を組み込む場合は、コース序盤をゆっくり入り、後半にかけて徐々にペースを上げていくことで、レース終盤の粘りを養う効果が期待できます。走力や大会までの残り期間に応じて、これらのメニューを組み合わせながら千代川沿いコースを使い分けるとよいでしょう。
千代川沿いコースはパラグライダーを目印に距離感をつかめる稀有な河川敷
鳥取市を流れる千代川沿いの周回ランニングコースは、22kmという本格的な距離、信号の少ない走りやすい河川敷、そして霊石山から飛び立つパラグライダーやハンググライダーという空の絶景を同時に楽しめる、鳥取市を代表するランニングスポットです。千代川は智頭町を水源として鳥取市で日本海に注ぐ一級河川であり、流域には歴史や文化に彩られた見どころも多くあります。山頂に西日本屈指のフライトエリアを持つ霊石山では、休日になると色とりどりのパラグライダーが空を舞い、河川敷を走るランナーの目を楽しませてくれます。春には約2kmにわたる桜並木が咲き誇り、鳥取マラソンのコースとも重なる区間があるなど、季節や目的に応じてさまざまな楽しみ方ができるのも大きな魅力です。
ペース走や距離走、LSDといった走り込みのトレーニングに向いた環境でありながら、空を見上げればパラグライダーが飛んでいるという光景に出会えるのは、全国的に見ても珍しいランニングコースといえます。鳥取市を訪れるランナーはもちろん、地元でトレーニングを重ねる市民ランナーにとっても、千代川沿い周回コースは一度は走っておきたいコースです。河川敷の整備が今後さらに進めば、より多くのランナーやサイクリストに親しまれる環境が整っていくでしょう。








