海岸清掃とジョギングを組み合わせたビーチクリーン活動でSDGsに貢献する方法

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朝日が昇る静かな海岸で、一人のランナーが砂浜を走っています。爽やかな潮風と波の音に包まれながら、規則正しい呼吸を繰り返すその時間は、心身をリフレッシュさせる至福のひとときです。しかし、ふと足元を見ると、美しい景色の中に色とりどりのプラスチックごみが混じっていることに気づきます。ペットボトルや食品パッケージ、漁具の破片などが波に打ち上げられている光景は、私たちの海が静かに助けを求めている証なのです。そんな時、ランナーは立ち止まり、手に持っていた袋にごみを拾い入れます。この瞬間、単なるジョギングが、地球環境を守るビーチクリーン活動へと変わります。健康的な運動と環境保護を同時に実現するこの新しいライフスタイルは、世界中で注目を集めており、SDGs(持続可能な開発目標)の達成にも深く結びついています。海岸清掃活動は、私たち一人ひとりが今すぐに始められる、最も身近で効果的な社会貢献のひとつです。

目次

世界を変えた新しいムーブメント、プロギングの誕生

ビーチクリーンとジョギングを組み合わせた活動は、近年「プロギング」という名称で世界的なムーブメントとなっています。この言葉は、スウェーデン語で「拾う」を意味する「Plocka Upp」と、英語の「Jogging」を組み合わせた造語です。2016年にストックホルムでアスリートのエリック・アルストロム氏が始めたこのシンプルな活動は、わずか数年で世界100カ国以上に広がりました。

プロギングやビーチクリーンの魅力は、複数の目的を同時に達成できる点にあります。自分自身の健康増進を図りながら、精神的なリフレッシュを得て、さらに環境保護という社会貢献まで実現できるのです。これは単なる運動やボランティア活動の枠を超えた、ホリスティック(全体的)な実践として注目されています。

日本国内でも、海岸清掃活動に参加する人々が増えています。週末の早朝、家族連れや友人同士、あるいは一人で海岸を訪れ、ジョギングやウォーキングをしながらごみを拾う姿が各地で見られるようになりました。この活動が多くの人々の心を捉える理由は、環境問題の深刻さと、それに対して自分が直接的に貢献できるという実感にあるのです。

海洋プラスチック汚染という深刻な現実

ビーチクリーン活動の背景には、深刻化する海洋プラスチック汚染という地球規模の環境問題があります。現在、世界中の海には約1億5,000万トンものプラスチックごみが存在すると推定されています。さらに衝撃的なことに、毎年約800万トンもの新たなプラスチックごみが海に流入し続けているのです。この量は、ジェット機5万機分に相当します。

2016年の世界経済フォーラムでは、このままの状態が続けば2050年までに海洋中のプラスチックごみの重量が魚の重量を上回るという予測が示されました。この衝撃的な未来予測は、私たちがいかに早急に行動を起こさなければならないかを物語っています。

海洋ごみの大部分は、実は私たちが暮らす陸地から発生しています。専門家の調査によれば、海洋ごみの7割から8割は陸上由来であり、街中に捨てられたごみが雨水とともに川に流され、やがて海へと到達するのです。日本からも年間約2万トンから6万トンものプラスチックごみが海に流出していると推計されており、この問題は決して他人事ではありません。

海洋プラスチック汚染は、海の生態系に深刻な被害をもたらしています。少なくとも700種類もの海洋生物が、プラスチックごみの影響を受けているとされています。ウミガメの52パーセント、海鳥の90パーセントがプラスチックを誤って摂取しているという調査結果もあります。漁網に絡まって動けなくなったり、ビニール袋を餌と間違えて飲み込んだりすることで、多くの海洋生物が命を落としているのです。

経済的な影響も無視できません。アジア太平洋地域だけでも、プラスチックごみによる年間の経済損失は観光業で約6億2,000万ドル、漁業と養殖業で約3億6,000万ドルに達すると試算されています。美しい海岸が汚染されれば観光客は減少し、漁業資源も減少します。さらに、船舶の航行にも支障をきたすなど、私たちの経済活動全体に悪影響を及ぼしているのです。

マイクロプラスチックという見えない脅威

海洋プラスチック汚染の問題は、目に見える大きなごみだけではありません。より深刻なのが、マイクロプラスチックと呼ばれる5ミリメートル以下の微細なプラスチック粒子です。これらは、波や紫外線の影響で大きなプラスチック製品が砕けてできたものや、化粧品のスクラブ剤として使われていたマイクロビーズなどが含まれます。

マイクロプラスチックの恐ろしい点は、海中の有害化学物質をスポンジのように吸着する性質を持っていることです。汚染物質を高濃度に含んだマイクロプラスチックをプランクトンが食べ、そのプランクトンを小魚が食べ、さらに大きな魚が食べるという食物連鎖を通じて、最終的には私たち人間の食卓にも届く可能性があります。

さらに科学者たちを悩ませているのが、「ミッシングプラスチック問題」です。海洋に流出したプラスチックのうち、実際に海面で観測できるのはわずか1パーセントに過ぎないとされています。残りの99パーセントはどこへ消えたのでしょうか。海洋研究開発機構などの研究によれば、その大部分は紫外線が届かず分解されにくい深海へと沈み、巨大なごみの貯蔵庫を形成していると考えられています。

特に注目すべきは、日本近海のマイクロプラスチック濃度が世界平均の27倍にも達しているという事実です。東アジアから流出したごみが黒潮に乗って流れ着くため、日本周辺の海域は世界でも有数のマイクロプラスチック汚染ホットスポットとなっているのです。

ビーチクリーンとSDGsの深い結びつき

海岸清掃活動は、国連が掲げるSDGs(持続可能な開発目標)の達成に大きく貢献します。SDGsは2030年までに達成すべき17の国際目標ですが、ビーチクリーンは複数の目標に同時にアプローチできる効果的な活動なのです。

最も直接的な関連があるのが、SDG14「海の豊かさを守ろう」です。海岸からプラスチックごみを一つ取り除くたびに、海洋生物がそれを誤飲したり絡まったりするリスクを減らすことができます。これは海洋汚染を防止し削減するという目標に直結する具体的な行動です。

次に重要なのが、SDG3「すべての人に健康と福祉を」への貢献です。ビーチクリーンをジョギングと組み合わせたプロギングは、優れた全身運動となります。ごみを拾うために屈んだりしゃがんだりする動作が、体幹や下半身の筋肉を刺激し、通常のジョギングよりも1.2倍ものカロリーを消費するという研究結果もあります。さらに、太陽の光を浴びることでビタミンDの合成が促進され、骨や免疫システムの健康維持にも役立ちます。

精神的な健康面での効果も見逃せません。ジョギングによって脳内で分泌されるエンドルフィンは、いわゆる「ランナーズハイ」と呼ばれる高揚感をもたらします。これに加えて、社会に貢献しているという達成感や自己肯定感が重なることで、ストレスが大幅に軽減されることが参加者の体験から報告されています。最近では、ビーチクリーン参加者の唾液を採取してストレスホルモンであるコルチゾールや、人との絆形成に関わるオキシトシンの濃度変化を測定する実証実験も行われており、ボランティア活動がもたらす幸福感の科学的解明が進んでいます。

SDG11「住み続けられるまちづくりを」にも深く関わっています。ビーチクリーン活動は、地域コミュニティの形成に大きな役割を果たします。年齢や職業、バックグラウンドの異なる人々が、地域をより良くしたいという共通の目的のもとに集まり、共に汗を流すことで自然なコミュニケーションが生まれます。こうした活動を通じて、地域の社会的結束が強まり、住民の間に地域環境への愛着と当事者意識が育まれていくのです。

清潔で美しい海岸や公園は、誰もが快適で安全に過ごせる公共空間となります。清掃活動を継続することで、ごみのポイ捨てや不法投棄を抑制する社会的な雰囲気が醸成されます。実際に、京都府京丹後市に移住した人が始めたビーチクリーンが地域住民を巻き込む大きなムーブメントとなり、回収したプラスチックをアップサイクルする新たな事業へと発展した事例もあります。個人の小さなアクションが地域全体の再生の起爆剤となり得ることを示す素晴らしい例です。

SDG12「つくる責任 つかう責任」への影響も重要です。ビーチクリーン活動でごみを分別する作業は、現代の消費社会を映し出す鏡のようなものです。膨大な量の使い捨てプラスチック容器や包装を目の当たりにすることで、参加者は自らの消費生活を省みるきっかけを得ます。その結果、マイボトルやエコバッグを携帯する、過剰包装を断る、リサイクル可能な製品を選ぶといった、より責任ある消費行動へと繋がっていくのです。

さらに、SDG17「パートナーシップで目標を達成しよう」の観点からも注目すべき取り組みがあります。沖縄県の「八重山ビーチクリーンプロジェクト」では、繊維メーカー、環境NPO、旅行会社、地元自治体が連携して、修学旅行生が回収したペットボトルを繊維メーカーが買い取り、新たなアパレル製品へと再生させる循環型モデルを構築しています。多様な主体が協力することで、環境的にも経済的にも持続可能なシステムが実現しているのです。

このように、ビーチクリーンという一つの活動は、複数のSDGs目標に同時にアプローチできるキーストーン活動なのです。フィットネスという身近な動機から参加した人が、地域コミュニティとの繋がりを感じ、自らの消費行動を見直し、海洋環境の現状を学ぶ。この一連の体験が、より広範な市民活動や持続可能な社会への関心を喚起する貴重な入り口となっています。

安全に参加するための実践的なガイド

海岸清掃活動に参加する際には、適切な準備と安全への配慮が不可欠です。ここでは、初めて参加する方でも安心して活動できるよう、具体的なノウハウをご紹介します。

まず、服装についてです。海岸には鋭利なガラス片や金属片が落ちている可能性があるため、肌を保護できる長袖と長ズボンが基本となります。日差しが強い海岸では、熱中症対策として帽子は必須アイテムです。つばの広い帽子を選ぶことで、顔や首筋への直射日光を避けることができます。日焼け止めも忘れずに塗りましょう。

足元の装備も重要です。ビーチサンダルは動きにくく、足を怪我する危険性が高いため避けてください。つま先が保護された頑丈な運動靴や長靴を選ぶことで、ガラス片や釘などによる怪我を防ぐことができます。砂浜を歩く際は、砂の下に危険物が隠れている可能性もあるため、注意深く足元を確認しながら進みましょう。

手を保護するための作業用手袋は必ず着用してください。軍手でも構いませんが、より厚手のゴム手袋や革手袋があると、鋭利なごみを扱う際により安全です。また、トング(ごみばさみ)があると、直接触れたくないごみや手の届きにくい場所のごみを拾う際に非常に便利です。

ごみ袋は、破れにくい厚手のビニール袋を用意しましょう。環境に配慮するなら、繰り返し使える麻袋やメッシュバッグもおすすめです。複数の袋を用意して、ごみの種類ごとに分別できるようにするとより効果的です。

水分補給のためのマイボトルも必ず携帯してください。海岸での活動は想像以上に体力を消耗します。特に夏場は熱中症のリスクが高まるため、こまめな水分補給を心がけましょう。また、万が一の怪我に備えて、簡易的な救急セット(絆創膏、消毒液、包帯など)も持参すると安心です。

危険な漂着物への対処方法

海岸清掃活動では、時として危険な漂着物に遭遇する可能性があります。これらを正しく識別し、適切に対処することが参加者の安全を守る上で極めて重要です。

最も注意すべきは医療系廃棄物です。注射器や注射針、薬の入ったアンプル、点滴バッグなどは、感染症のリスクを伴う極めて危険な廃棄物です。これらを発見した場合は、絶対に素手で触れてはいけません。

高圧ガス容器も危険です。スプレー缶やカセットコンロ用のガスボンベ、消火器などは、内部に高圧ガスが残っている場合、衝撃や熱によって爆発する恐れがあります。錆びていたり変形していたりする容器は特に注意が必要です。

中身のわからないポリタンクやドラム缶にも近づかないでください。有害な化学物質が入っている可能性があります。特に、ハングルや中国語が表記されたポリタンクが日本海側で多数発見されており、中には塩酸などの危険物が含まれていた事例も報告されています。

信号弾や発煙筒、さらには不発弾といった火薬類が海岸に漂着することもあります。これらは誤って刺激を与えると暴発する危険性があり、非常に危険です。

これらの危険物を発見した際の対処法は明確です。「絶対に触れない、動かさない」という原則を守ってください。安全な距離を保ち、可能であればスマートフォンで写真を撮影して場所を記録し、速やかにイベント主催者、海上保安庁、警察、または自治体の担当部署に通報してください。

海岸に医療廃棄物や化学物質、爆発物などが漂着しているという現実は、この問題が単なるポイ捨てや環境美化の範疇を超えた、深刻な公衆衛生と安全保障上のリスクであることを示しています。ビーチクリーン活動に参加する私たちは、単なる美化活動だけでなく、地域の安全を守る重要な役割も担っているのです。

効果的な清掃活動の実践方法

安全が確保された上で、次は活動の効果を最大化するためのベストプラクティスを実践しましょう。

まず、拾うべきものと残すべきものを区別することが大切です。回収の対象となるのは、ペットボトル、食品包装、レジ袋、漁具、発泡スチロールなどの人工物です。一方で、海藻や貝殻、流木といった自然物は、海岸の生態系を構成する重要な要素であるため、ごみと間違えて回収しないよう注意が必要です。

多くの環境保護団体では、回収したごみを種類ごとに分別し、その数量を記録することを推奨しています。特に国際海岸クリーンアップ(ICC)の調査手法を採用している団体では、ペットボトルのキャップ、ストロー、レジ袋といった品目ごとにデータを集めます。

このデータ収集には重要な意味があります。どのようなごみが、どこから、どれだけ発生しているのかを可視化することで、問題の根本原因を特定できるのです。収集されたデータは、企業への働きかけや法規制の制定といった、より本質的な解決策を導き出すための科学的根拠となります。実際に、市民が長年にわたり蓄積してきたデータが、2009年の「海岸漂着物処理推進法」の制定に大きく貢献したという事例もあります。

ビーチクリーン活動は、単にごみを拾うだけでなく、市民科学としての側面も持っているのです。私たち一人ひとりの地道な記録作業が、社会を変える力になっていることを忘れないでください。

日本国内の多様なビーチクリーンコミュニティ

日本全国には、ビーチクリーンやプロギングを推進する多様なコミュニティが存在します。それぞれの団体が独自の哲学とスタイルを持ち、参加者の異なる関心に応えることで、ムーブメント全体の裾野を広げています。

一般社団法人プロギングジャパンは、「ポジティブな力で足元から世界を変える」をスローガンに、フィットネスという切り口から環境活動を捉え直しています。走ることの爽快感や健康増進を前面に押し出し、ごみ拾いを楽しいアクティビティの一環として位置づけています。義務感からではなく、楽しいから、健康に良いからという動機で人々を惹きつけ、結果として環境貢献に繋げるアプローチは、特にランナーやスポーツ愛好家から支持されています。

NPO法人海さくらは、「目指せ!日本一楽しいゴミ拾い」というユニークなモットーを掲げています。Jリーグのプロサッカーチーム、現役の力士、人気お笑い芸人、さらには国民的アニメキャラクター「サザエさん」まで、多彩なコラボレーションを実現しています。ごみ拾いをフェスティバルのような非日常的な体験に変えることで、環境問題に関心がなかった層をも巻き込むことに成功しています。

認定NPO法人グリーンバードは、「きれいな街は、人の心もきれいにする」というコンセプトのもと、誰でも気軽に参加できる「ゆるさ」を魅力としています。活動のほとんどは事前登録が不要で、指定された日時に集合場所へ行くだけで参加できます。約1時間で終わる活動は、社会貢献への最初の一歩として最適な設計となっており、年齢や性別、国籍を問わず多様な人々が集います。

一般社団法人JEAN(Japan Environmental Action Network)は、日本における市民科学の草分け的存在で、国際海岸クリーンアップのナショナルコーディネーターを務めています。JEANが主催するクリーンアップは、単なる清掃活動ではなく科学的な調査活動でもあります。参加者は世界共通のデータカードを用い、拾ったごみを厳密に分類・計数します。この地道なデータ収集活動が、海岸漂着物処理推進法の成立に大きく貢献しました。

これらの団体が示すように、日本のビーチクリーン活動は画一的ではなく、多様な価値観を受け入れる洗練されたエコシステムを形成しています。フィットネス、エンターテイメント、コミュニティ、科学といった異なる入り口を用意することで、社会のあらゆる層の人々が参加できる構造が生まれています。

継続的な活動のための工夫とモチベーション維持

ビーチクリーン活動を長く続けるためには、いくつかの工夫が効果的です。まず、無理のないペースで活動することが大切です。毎週参加しなければならないというプレッシャーを感じる必要はありません。月に一度、あるいは季節ごとなど、自分のライフスタイルに合わせた頻度で参加すれば良いのです。

仲間と一緒に参加することも、モチベーション維持に役立ちます。家族や友人を誘って参加すれば、活動自体が楽しい交流の機会となります。また、SNSで活動の様子を発信することで、同じ志を持つ人々とのネットワークが広がり、新たな刺激を受けることができます。

活動の成果を記録することもおすすめです。回収したごみの量や種類、活動した場所や日時を記録しておくことで、自分の貢献を可視化できます。数ヶ月、数年と続けることで、自分がどれだけの環境保護に貢献したかを実感でき、大きな達成感を得られます。

季節の変化を楽しむことも、継続のコツです。春は穏やかな気候の中で桜を眺めながら、夏は早朝の涼しい時間帯に、秋は紅葉の美しい景色とともに、冬は澄んだ空気の中で。それぞれの季節ならではの海岸の表情を楽しみながら活動することで、飽きることなく続けられます。

企業や学校での取り組み事例

近年では、企業や学校が組織的にビーチクリーン活動に取り組む事例も増えています。企業にとって、ビーチクリーン活動はCSR(企業の社会的責任)活動の一環として、また従業員のチームビルディングの機会としても有効です。社員が共通の目的のもとに協力して作業することで、部署を超えた交流が生まれ、組織の一体感が高まります。

また、環境保護に積極的に取り組む企業姿勢を示すことで、企業イメージの向上にも繋がります。特に近年では、消費者や投資家が企業の環境への取り組みを重視する傾向が強まっており、ビーチクリーン活動への参加は企業価値を高める要素となっています。

学校教育においても、ビーチクリーン活動は貴重な学びの機会となります。実際に海岸でごみを拾い、分別し、記録する過程で、生徒たちは環境問題を身近な問題として捉えることができます。教室で学ぶ理論だけでなく、実践を通じて環境保護の重要性を体感することで、より深い理解と行動変容に繋がります。

修学旅行や校外学習の一環としてビーチクリーン活動を取り入れる学校も増えています。沖縄や九州、日本海側など、海洋ごみ問題が深刻な地域を訪れる際に、観光だけでなく環境保護活動にも参加することで、生徒たちの社会貢献意識を育むことができます。

国際的な協力と越境汚染への対応

海洋プラスチック汚染は国境を越えた地球規模の問題です。日本の海岸に漂着するごみの中には、外国語表記のある容器や包装が多く含まれています。黒潮や対馬海流などの海流によって、東アジア諸国から流出したごみが日本の海岸に運ばれてくるのです。

この越境汚染の問題に対処するためには、国際的な協力が不可欠です。近年では、東アジア地域の国々が協力して海洋ごみ削減に取り組む枠組みが構築されつつあります。日本、中国、韓国、台湾などが参加する会議では、各国の海洋ごみの実態調査結果が共有され、共同での対策が議論されています。

また、ビーチクリーン活動で回収されたごみのデータは、国際的な研究にも活用されています。どの国からどのようなごみが流出しているかを特定することで、発生源での対策を促すことができます。市民一人ひとりの地道な活動が、国際的な環境保護の取り組みに貢献しているのです。

テクノロジーとビーチクリーン活動の融合

近年では、テクノロジーを活用したビーチクリーン活動も登場しています。スマートフォンのアプリを使って、拾ったごみの種類や量を簡単に記録できるシステムが開発されています。これらのアプリでは、GPSデータと連動することで、どの地域でどのようなごみが多いかをマッピングすることも可能です。

また、SNSを活用したムーブメントも広がっています。ハッシュタグを使って活動の様子を投稿することで、世界中の参加者と繋がることができます。他の人の活動を見ることでモチベーションが高まり、自分の活動を発信することで周囲の人々への啓発にも繋がります。

AI(人工知能)を活用した海洋ごみの監視システムも開発が進んでいます。衛星画像やドローンの映像をAIが分析することで、海洋ごみが集積している場所を効率的に特定できるようになってきています。こうした技術の発展により、清掃活動をより戦略的かつ効果的に展開できるようになっています。

循環型社会に向けた取り組み

ビーチクリーン活動で回収されたプラスチックごみを、新たな製品に生まれ変わらせるアップサイクルの取り組みも注目されています。回収したペットボトルを再生して繊維製品を作ったり、プラスチックごみをアート作品や建築資材に変えたりする事例が各地で生まれています。

これらの取り組みは、単にごみを処分するのではなく、資源として有効活用するという循環型経済(サーキュラーエコノミー)の考え方に基づいています。廃棄物を出さず、資源を循環させる社会システムの構築は、SDGsの達成にも不可欠な要素です。

ビーチクリーン活動は、この循環型社会への移行における重要な第一歩となります。活動を通じて回収されたごみが新たな製品に生まれ変わる過程を知ることで、参加者は資源循環の重要性を実感できます。また、どのようなプラスチック製品が海を汚しているかを知ることで、製品設計や包装方法の改善を求める声が高まり、企業の行動変容にも繋がっていきます。

私たちにできること、始められること

ビーチクリーン活動に参加するために、特別な資格やスキルは必要ありません。今すぐにでも始められる、誰もが実践できる活動なのです。まずは、近くの海岸を訪れてみてください。散歩やジョギングのついでに、手の届く範囲のごみを一つ拾うだけでも立派な貢献です。

地域で開催されているビーチクリーンイベントに参加するのも良い方法です。多くの団体が定期的に活動を行っており、初めての参加者も歓迎されています。経験豊富なスタッフのサポートを受けながら、安全に活動を楽しむことができます。

家族や友人と一緒に、自分たちだけの小さなビーチクリーンを企画するのもおすすめです。休日に海へ遊びに行く際、レジャーシートやクーラーボックスと一緒に、ごみ袋と軍手を持参するだけです。遊んだ後にみんなでごみを拾って帰ることで、楽しい思い出とともに環境への貢献を実感できます。

日常生活の中でプロギングの精神を取り入れることもできます。通勤や通学の途中、公園でのウォーキング中、犬の散歩中など、外出する際にポケットに小さなビニール袋を忍ばせておきましょう。道端に落ちているごみを見つけたら、さりげなく拾って袋に入れます。このささやかな習慣が、あなたの街をより美しくし、その姿を見た他の人々の意識も変えていきます。

未来世代へのバトン

ビーチクリーン活動を通じて、私たちは次世代に美しい海と地球を引き継ぐ責任を果たすことができます。子どもたちと一緒に海岸清掃に参加することは、環境教育の最良の機会となります。実際に海岸でごみを拾い、海洋生物への影響を学ぶことで、子どもたちは環境保護の重要性を深く理解します。

海岸で拾ったごみを見せながら、「このペットボトルはどこから来たのかな」「このプラスチックを海の生き物が食べてしまったらどうなるかな」と問いかけることで、子どもたちの探究心と思考力を育むことができます。また、みんなで協力してきれいになった海岸を見ることで、自分たちの行動が環境を良くできるという自信と、社会に貢献する喜びを体験できます。

学校での環境教育と家庭でのビーチクリーン体験を組み合わせることで、子どもたちの環境意識はさらに高まります。夏休みの自由研究として、海岸でのごみ調査を行ったり、回収したごみを使ってアート作品を制作したりするのも良いでしょう。

子どもたちが大人になる頃には、プラスチックごみのない美しい海が当たり前の世界になっているように、私たち大人が今、行動を起こす必要があります。ビーチクリーン活動は、その実現への確かな一歩なのです。

ビーチクリーンとジョギングを組み合わせたライフスタイルは、個人の健康増進、精神的な充足感、地域コミュニティの形成、そして地球環境の保護という、複数の価値を同時に実現する素晴らしい活動です。SDGsの達成に向けて、私たち一人ひとりができる最も身近で効果的な海岸清掃活動として、今後ますます重要性が高まっていくでしょう。

明日の朝、海岸を訪れてみませんか。爽やかな潮風を感じながらジョギングを楽しみ、途中で見つけたごみを一つ拾う。そのシンプルな行動が、あなた自身の心身を健康にし、美しい海を守り、そして未来世代により良い地球を残すことに繋がります。すべての一歩が、すべてのごみが、そして私たち一人ひとりの参加が、持続可能な未来を創る力となるのです。さあ、今日から始めましょう。あなたの一歩が、世界を変える波の最初の一滴となります。

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