長野県茅野市にある白樺湖には、標高1,400m台の高原を舞台にした周回ジョギングコースがあります。地元では「白樺ぐるりん」と呼ばれ、一周約3.8kmの湖畔をゴムチップ舗装の遊歩道が囲んでいます。標高の高さを生かした準高地トレーニングの場として、市民ランナーから競技志向の選手まで幅広く利用されているのが特徴です。
車山や蓼科山といった名峰に囲まれた高原リゾートは、避暑地として長い歴史を持ち、ボートや遊園地など観光資源も豊富にそろっています。この記事では、白樺ぐるりんのコースデータやアクセス方法、合宿地としての設備、そして蓼科山を含む周辺エリアの楽しみ方まで、できるだけ具体的な数字を添えてご紹介します。旅行やトレーニング合宿の計画を立てる際に、役立ててもらえればと思います。

白樺湖の周回コースは一周3.8kmのゴムチップ舗装で標高1,400m
白樺湖は、長野県茅野市と北佐久郡立科町にまたがる人造湖です。標高はおよそ1,400m~1,420mの高原に位置し、周囲を美ヶ原高原や車山高原、蓼科高原に囲まれています。夏でも最高気温が25℃前後にとどまることが多く、都市部の暑さを避けて過ごせる避暑地として古くから親しまれてきました。
湖畔を一周する「白樺ぐるりん」は、距離が約3.8km、路面はゴムチップ舗装で、起伏がほとんどないフラットな設計になっています。500mごとに距離表示があるため、タイムを計測しながら走りたいランナーにも向いています。ゴムチップ舗装はアスファルトに比べてクッション性が高く、着地の衝撃が膝や足首にたまりにくいという特徴があります。長時間走り続けても脚への負担が軽く感じられるという声は、実際に訪れたランナーの体験記にも数多く見られます。
一周3.8kmという距離は、2周で約7.6km、3周で約11.4kmとなり、初心者のジョギングから、フルマラソンやハーフマラソンを見据えたロング走まで、走力に応じて距離を調整しやすい設計です。
白樺湖は昭和15年着工の農業用ため池から生まれた
現在は観光地として知られる白樺湖ですが、もとをたどれば農業用水を確保するために造られた人工のため池です。昭和初期まで、白樺湖がある一帯は「池ノ平」と呼ばれる草原地帯でした。この地を流れる音無川は周辺500ヘクタール余りの水田を潤していたものの、水温が平均8℃、盛夏でも14~15℃程度しかなく、稲の生育に必要な25℃以上には遠く及ばない冷たさでした。そのため、水田のおよそ3分の1が収穫不能になるという深刻な事態を抱えていたといいます。
この課題を解決するため、水を一時的に貯めて太陽光で温めてから田に流す「温水ため池」の建設が計画され、1940年に工事が始まりました。ところが着工直後に日本は第二次世界大戦に突入し、資材や作業員の不足で工事は難航します。1944年には県から工事中止の通達が出されましたが、地元の柏原区の住民は区有林の木材を売って資金を捻出し、150戸の区民全員で工事を続けたそうです。
こうして1946年に温水ため池が完成しました。当時の県知事は「蓼科大池」と命名しましたが、地元の柏原区民にはあまり評判が良くなかったといわれています。代わりに区民が考えた「白樺湖」という呼び名が定着し、1953年に正式名称として採用されました。現在も白樺湖は農業用ため池としての役割を果たしており、貯えた水は音無川を通じて茅野市の北山・米沢・ちの地域の約500ヘクタールの水田に供給され続けています。湖畔を走りながらこの歴史を思い出すと、景色の見え方も少し変わってくるのではないでしょうか。
標高1,400mの準高地トレーニングは平地より心肺に負荷がかかる
標高1,000mから1,500m程度の場所は「準高地」と呼ばれ、平地に比べて空気中の酸素濃度がわずかに低くなります。この環境で走り続けると、体内の赤血球や酸素運搬能力が徐々に高まり、平地に戻った際の持久力向上につながるとされています。本格的な高地トレーニングの効果が期待できるのは標高1,500m~3,000m程度ですが、高地トレーニングの経験が浅い選手や、体への負担を抑えたい市民ランナーには、標高1,000m前後の環境の方が向いているという見方もあります。標高1,400mの白樺湖は、このちょうど中間にあたる立地といえるでしょう。
実際に、白樺湖周辺ではAT値やVO2MAXの測定を組み合わせた夏合宿のトレーニングプログラムが提供されているほか、白樺湖や霧ヶ峰高原を舞台にした本格的な走り込み合宿も開催されています。標高1,000m~1,500mの環境で週に1~2回、30分から1時間程度のランニングを行い、平地でのスピードトレーニングと組み合わせると、より効果的だとされています。競技志向の選手でなくても、涼しい高原の空気の中を走ること自体が気分転換になります。
実際に走ったランナーは日陰の少なさを注意点に挙げている
インターネット上には、白樺湖のジョギングコースを訪れたランナーの体験記が数多く公開されています。多くの人が評価しているのは、ゴムチップ舗装によるアスファルトとの走り心地の違いです。標高1,400mの準高地に位置するため平地よりも酸素がわずかに薄く、心肺機能を効率よく鍛えられる環境だという声も見られます。箱根駅伝の出場常連校を含む大学の陸上競技部が夏場の走り込み合宿地として利用しているともいわれており、競技レベルの高いランナーからも支持されているようです。
一方で、注意点として挙げられているのが日陰の少なさです。湖畔のコースは開けた場所が多く、夏場の晴天時には直射日光を遮るものが少ないため、想像以上に体感温度が上がることがあります。池の平ホテル周辺は観光客で混雑しやすい時間帯があるため、本格的にペースを上げたい場合は早朝を選ぶとよさそうです。平地でのタイムをそのまま基準にペース設定をすると、酸素の薄さから予想以上にきつく感じることがあるため、初めて訪れる際は体調と相談しながら走ることをおすすめします。
池の平ホテルは松本大学と組んだ科学的トレーニング支援を提供
白樺湖畔に立つ白樺リゾート池の平ホテルでは、松本大学との産学連携による「健康いきいき診断プログラム」を展開しています。AT値(無酸素性作業閾値)や最大酸素摂取量(VO2MAX)といった科学的データの計測にもとづき、専門家がトレーニングメニューの作成をサポートする仕組みが整っているのが特徴です。
コースも多彩で、湖畔をめぐる平坦なロードコースに加えて、山中を駆け抜けるトレイルコース、さらには400mの土のトラックまで用意されており、目的やレベルに応じてメニューを組み立てられます。宿泊についてもバイキング形式の食事や温泉施設が完備されているため、練習に集中しながら心身を休められる環境が整っています。大学の陸上競技部から市民ランナーのグループ合宿まで、幅広い層に選ばれている理由はこうした設備の充実ぶりにあるといえそうです。プランの詳細や料金は随時更新されるため、訪問前に公式情報を確認しておくと安心です。
茅野駅からのアクセスはバス約50分、車なら約40分
白樺湖への公共交通機関でのアクセスは、JR中央本線の茅野駅が起点になります。茅野駅からアルピコ交通バスの白樺湖・車山高原・霧ヶ峰線に乗車し、「東白樺湖」または「白樺湖バスステーション」で下車すると、所要時間はおおよそ50分です。
車で訪れる場合は、観光道路として知られる「ビーナスライン」を利用するのが一般的です。茅野駅から車でおよそ40分ほどで白樺湖周辺に到着します。高原の景色を楽しみながらドライブできる人気ルートで、車山高原や霧ヶ峰高原へのアクセスも良好です。
白樺湖周辺には、白樺湖観光センターの駐車場をはじめ、白樺湖南側駐車場、南白樺湖駐車場など複数の駐車場が整備されています。周回コースを利用する際は、これらに車を停めてスタートするのが便利です。南側の駐車場には公衆トイレも設置されており(男性用大2・小3、女性用4、身体障がい者用1)、ランニング前後の準備にも困りません。
蓼科山へは蓼科牧場からゴンドラで御泉水自然公園駅まで
蓼科山方面へ向かう場合は、東白樺湖から「たてしなスマイル交通」のシラカバ線に乗り換え、「蓼科牧場」で下車します。所要時間は約10分です。そこから白樺高原国際スキー場のゴンドラリフトで「御泉水自然公園駅」まで上がり(約10分)、さらに徒歩約20分で蓼科山の七合目登山口に到達します。なお、七合目登山口付近は駐車スペースが限られているため、蓼科山への登山も合わせて計画している場合は、早めの到着を心がけたほうがよさそうです。
夏は最高気温25℃前後で日差し対策が必須
夏(6月~8月)の白樺湖は最高気温が25℃前後と、平地の猛暑に比べてかなり過ごしやすい気候です。ただし標高1,400mでも晴天時にはしっかりと日差しが照りつけ、体感的には十分に暑さを感じます。日中の強い日差しを避けるため、早朝や夕方の涼しい時間帯を選び、帽子やサングラス、日焼け止めを準備しておくとよいでしょう。
秋(9月~11月)は高原の紅葉が美しい季節ですが、季節の変わり目からは急激に気温が下がり、日中と朝晩の気温差が大きくなります。長袖のウェアや、脱ぎ着しやすいウィンドブレーカーを用意しておくと安心です。
冬(12月~2月)は朝晩を中心に氷点下まで冷え込み、路面の凍結にも注意が必要です。防寒対策をしっかり行えば、澄み切った空気と雪景色の中を走る特別な体験ができます。春(3月~5月)は残雪の影響で路面のコンディションが安定しない時期もあるため、事前に現地の状況を確認しておくと安心です。いずれの季節も、標高の高さによる紫外線の強さと平地との気温差には注意し、重ね着できる服装を準備しておくのがコツです。
蓼科山の七合目登山口ルートは登り2時間20分、下り1時間40分
蓼科山は標高2,531m、八ヶ岳連峰の最北端に位置する山です。長野県の茅野市と北佐久郡立科町にまたがる山容から「諏訪富士」とも呼ばれ、地元の人々に親しまれてきました。山頂からは八ヶ岳連峰や北アルプス、白樺湖周辺の高原地帯を一望できます。
初心者向けとされる代表的なルートが、七合目登山口からのコースです。登山口から山頂までの登りはおよそ2時間20分、下りはおよそ1時間40分、距離にして約4.7km、累計標高差は635m程度とされています。「七合目登山口→馬返し→天狗の露地→蓼科山荘(将軍平)→蓼科山頂ヒュッテ→蓼科山頂」という道のりで、難易度・体力ともに5段階中2程度と、登山経験の浅い人でも挑戦しやすいレベルです。ただし蓼科山荘から蓼科山頂ヒュッテにかけての区間には鎖場も数か所あり、後半は油断せず慎重に進む必要があります。
七合目登山口には約50台分の無料駐車場がありますが、6月から10月にかけての土日は午前中のうちに満車になることが多いようです。早めの到着を心がけると、駐車場探しに時間を取られずに済みます。ジョギングで鍛えた脚力を、この登山で試してみるのも一つの楽しみ方でしょう。
車山高原と女神湖、御射鹿池も白樺湖から日帰り圏内
白樺湖から程近い車山高原は、紅葉の名所として知られる高原エリアです。夏はニッコウキスゲなどの高山植物が咲き誇り、車山肩からの眺望は多くの観光客を集めています。霧ヶ峰高原とも隣接しており、ハイキングコースも充実しています。
女神湖も白樺湖から車で少し移動した先にある景勝地です。湖の周囲には遊歩道が整備されており、白樺湖とあわせて訪れれば、高原ならではの湖巡りを楽しめます。蓼科エリアには、日本画家・東山魁夷の作品のモデルになったとされる「御射鹿池」もあります。静かな水面に周囲の木々が映り込む風景は、写真愛好者を惹きつけているようです。広大な長門牧場では、ソフトクリームや乳製品を味わいながらのんびり過ごせます。ジョギングの後に立ち寄って高原グルメを楽しむのもおすすめです。これらのスポットは車で比較的短時間で移動できる距離にあるため、ジョギングと観光を組み合わせた1日プランを立てやすいのも白樺湖エリアの魅力です。
車山高原のニッコウキスゲは7月中旬から下旬が見頃
車山高原から霧ヶ峰にかけての一帯は、ニッコウキスゲの群生地として全国的に知られています。正式には「禅庭花(ゼンテイカ)」と呼ばれる高山植物で、朝に開花して夕方には萎んでしまう一日花です。見頃は例年7月中旬から7月下旬にかけてで、車山肩から車山山頂に向かう遊歩道沿いや、「ビーナスの丘」周辺では黄色い花が一面に咲く景色が広がります。
車山肩からのハイキングコースは歩行時間およそ2時間程度で、本格的な登山装備がなくても気軽に高原ハイキングを楽しめます。見頃の時期は観光客で混雑するため、早朝や平日の訪問が向いているようです。ジョギングで体を動かした後、少し足を延ばしてこの景色を眺めに行くのもよいプランになるでしょう。
ビーナスラインは全長75.2kmで白樺湖がほぼ中間地点
白樺湖を訪れた際に合わせて体験したいのが、山岳ドライブルートとして知られる「ビーナスライン」です。茅野市街から松本市の美ヶ原高原までを結ぶ全長75.2kmの道路で、全線舗装されており通行料も無料のため、多くのドライバーやツーリングライダーに親しまれています。
白樺湖はこのビーナスラインのほぼ中間地点に位置しており、代表的な立ち寄りスポットの一つになっています。蓼科牧場のゴンドラリフト山頂駅に隣接する「女神のテラス1830」では、標高1,830m地点から女神湖や北アルプスの山並みを一望できます。ハンモックに揺られながら景色を眺められるこの展望スポットは、ジョギングの後の休憩場所としても向いていそうです。
ビーナスラインのベストシーズンは高山植物が咲く夏とされ、6月上旬から7月中旬にかけてはレンゲツツジ、7月上旬から下旬にかけてはニッコウキスゲが沿道各所で見頃を迎えます。汗を流した後、車でビーナスラインを走り抜けながら高原の花々を楽しむという組み合わせは、白樺湖エリアならではの過ごし方といえます。蓼科エリアはかつて湯治場として栄え、その後別荘地として発展してきた高原リゾートです。池や湖、滝など風光明媚なスポットが点在し、温泉施設も充実しているため、ジョギングを軸に周辺をゆったり周遊する旅程を組みやすいのも魅力です。
茅野市は白樺ぐるりんを健康づくりの取り組みとして発信
白樺湖が位置する茅野市では、市を挙げて「白樺ぐるりん」を活用した健康づくりの取り組みを紹介しています。市の公式サイトでも白樺湖周辺のランニング環境が取り上げられており、地域全体でランナーを迎え入れる姿勢がうかがえます。観光地としてだけでなく、健康増進やスポーツツーリズムの拠点として白樺湖を活用しようとする動きは、今後も広がっていきそうです。合宿地としての知名度の高さも、こうした地域の取り組みに支えられている側面があるといえるでしょう。
池の平ファミリーランドと湖天の湯でジョギング以外も楽しめる
白樺湖周辺では、ジョギング以外にも多彩なアクティビティが楽しめます。湖ではボートやカヌーといった水上レジャーが人気で、家族連れの観光客にも親しまれています。レンタサイクルを利用すれば、ジョギングとは違った視点で湖畔の景色を楽しめます。
湖畔にある「白樺リゾート池の平ファミリーランド」は、「日本で一番空に近い森の遊園地」と称される施設です。メリーゴーランドや森林鉄道といった定番アトラクションに加え、白樺の木々の間を駆け抜ける全長1.3kmの「アドベンチャーカート」や、急流下りが楽しめる「アドベンチャーカヌー」など、体を動かせるアクティビティがそろっています。白鳥をモチーフにしたボートもあり、のんびりと湖上の時間を過ごすこともできます。遊園地から徒歩約2分の場所には池の平ホテルがあり、フリーパス一日券が付いた宿泊プランも用意されているため、一人旅から家族旅行まで幅広いニーズに対応できます。周辺には美術館なども点在しており、ランニングを目的としない同行者がいても、それぞれの過ごし方を選べる懐の深さがあります。
ランニングの後に立ち寄れる入浴施設として、池の平ホテル内の「湖天の湯」があります。自家源泉である樽ヶ沢温泉を使用しており、大庭園露天風呂をはじめとした湯船で、走った後の体をゆっくりほぐせます。泉質はカルシウム・ナトリウムを含む硫酸塩泉で、やわらかな湯あたりが特徴です。日帰り入浴も可能なので、ジョギングと合わせて計画に組み込みやすいスポットです。なお、かつて湖畔にあった市営の日帰り温泉施設「白樺湖温泉すずらんの湯」は、2024年3月をもって営業を終了しました。訪問を計画する際は、最新の営業状況を各施設の公式情報で確認しておくと安心です。
白樺湖の周回ジョギングコースは、一周約3.8kmのフラットなゴムチップ舗装で、初心者から上級者まで無理なく利用できます。標高1,400mの立地による準高地トレーニングの効果に加え、茅野駅からバスで約50分、車ならビーナスライン経由で約40分というアクセスの良さも魅力です。湖畔には駐車場やトイレが複数整備されており、夏は避暑を兼ねたランニングに向く一方、日差し対策は欠かせません。秋冬は気温差が大きいため防寒着の準備も必要です。周辺には蓼科山、車山高原、女神湖、御射鹿池といった見どころが揃い、ジョギングの後には温泉施設で体を休めることもできます。
単なるランニングスポットにとどまらず、雄大な自然と高原ならではの涼しい気候、そして周辺に広がる観光資源が一体となっているのが、白樺湖エリアの価値だと思います。本格的なトレーニングを目的とするランナーはもちろん、旅行のついでに軽く体を動かしたいという人にも、それぞれの楽しみ方ができる場所です。茅野市の自然環境の中で蓼科山を望みながら、高原の空気を感じつつ湖畔を一周してみてはどうでしょうか。








