神奈川県の宮ヶ瀬湖を1周するジョギングコースは、距離にしておよそ17キロメートルです。信号がほとんどなく歩道も広いため、フルマラソンに向けた25キロ走・30キロ走の下地作りとしても、単体のロング走メニューとしても使いやすい距離感になっています。都心から本厚木駅経由で日帰りできる立地にありながら、ダム湖ならではの起伏と景観を味わえる点が、都市部の公園コースを何周もするのとは違う魅力です。ここでは、コースを区間ごとに分けた解説からアクセス方法、給水とトイレの場所、季節ごとの見どころ、安全に走るための注意点まで、実際にこのコースに挑む前に知っておきたい情報をまとめていきます。

宮ヶ瀬湖は東丹沢の宮ヶ瀬ダムがせき止めて作った人造湖
宮ヶ瀬湖は、神奈川県の相模原市、愛甲郡愛川町、愛甲郡清川村にまたがる人造湖です。相模川水系の中津川を宮ヶ瀬ダムがせき止めたことで生まれました。宮ヶ瀬ダムは重力式コンクリートダムとしては国内最大級のコンクリート使用量を誇り、高さは156メートル、堤の長さは約400メートルにおよびます。首都圏の水がめとしての役割を担う一方で、周辺は「県立あいかわ公園」や「宮ヶ瀬湖畔園地」として整備されており、桜の名所やアスレチック施設、遊覧船、観光放流など、家族連れから登山客、そしてランナーまで幅広い層が集まるレジャーエリアになっています。
東丹沢の山々に囲まれているため標高もあり、都心部に比べて夏場でも比較的涼しく走りやすいという声もあります。反面、湖畔の道路はアップダウンが多く、特に西側のダムサイト付近では急な登り坂が待ち受けているため、コースの特性を理解したうえでペース設定をすることが欠かせません。
周回コースは1周17キロ、後半に標高差150メートルの登りが集中する
宮ヶ瀬湖を1周するコースはおおよそ17キロメートルとされています。湖畔沿いの道路を歩道づたいに進む形が中心で、歩道の幅は広く、交通量も比較的少ないため、信号待ちや車の往来にストレスを感じることなくマイペースで距離を刻んでいけます。
このコース最大の特徴は、湖の西側、ダムサイトを下った後に待ち受ける登り区間です。標高差にしておよそ150メートルを、約3キロメートルの間で一気に登り切る必要があり、ロング走の後半にこの登りが来ることになるため、体力配分を誤ると終盤で大きく失速するリスクがあります。実際にこのコースを走ったランナーのブログでは、平均ペース5分08秒毎キロで1周を1時間28分ほどで走破した記録も紹介されており、平坦なロードのタイムだけでなく、アップダウンを織り込んだペース設定が求められます。
コースの多くは湖を見渡せるロケーションを走ることになり、水面の煌めきや対岸の山肌、季節ごとに変化する木々を眺めながら走れる点は、ビル街を走るのとはまったく違う爽快感があります。吊り橋や大橋を渡る区間もあり、写真映えするビューポイントも多いので、ロング走中の気分転換にもなります。
実測は20.8キロになることも、インクライン利用の有無で距離が変わる
宮ヶ瀬湖1周の距離は「17キロ」として紹介されることが多いですが、スタート地点の取り方や、ダムのインクライン(斜行エレベーター)を使うかどうか、湖畔園地内をどこまで迂回するかによって、実測距離には幅が出ます。ブログの記録のなかには「初めての宮ヶ瀬湖1周ラン20.8キロ」としてまとめているものもあり、水の郷駐車場を起点にダムのエレベーターを使わず階段や坂道を経由するルートを取ると、17キロより長い距離になるケースがあるようです。
ダムのインクラインは昇降行程216メートル、高低差121メートルで、早朝から運行している日もあるとの体験談があるため、少しでも距離を短縮したい場合は運行時間を事前に確認しておくとよさそうです。逆に、あえてインクラインを使わずダムの階段や坂道を走ることで、トレーニング強度を上げる走り方をしているランナーもいます。GPSウォッチの計測結果は道の端を走るか中央を走るかでも数百メートル単位で変わってくるため、「17キロ前後」という認識でコースに臨み、当日の実測値を見ながらペース管理をするのが現実的な向き合い方です。
コースは6つのエリアに分かれ、水の郷を起点に時計回り・反時計回りで走れる
宮ヶ瀬湖の周回コースをいくつかのエリアに分けて紹介します。走る方向は時計回り・反時計回りどちらでも組めるので、ここでは主要なランドマークを順に説明します。
水の郷エリアはスタート・ゴールの定番で、あゆの塩焼きも名物
湖畔のメインゲートとも言えるエリアで、土産物店や飲食店が立ち並ぶ「水の郷商店街」があります。あゆの塩焼きなどの名物グルメを提供する店も多く、スタート・ゴール地点として使うランナーが多いポイントです。駐車場も整備されており、ここを起点に反時計回り、時計回りどちらのルートを取ることもできます。
ダムサイトエリアでは宮ヶ瀬ダムの堤体とインクラインを間近に見られる
宮ヶ瀬ダムの堤体そのものを間近に見られるエリアです。「宮ヶ瀬ダム水とエネルギー館」などの学習施設もあり、ダムの構造やインクラインを眺めることができます。観光放流が行われる時期には、ダムから豪快に放流される水の様子を見学しながら小休止するランナーの姿もあるようです。このダムサイト付近から湖の西側にかけて、コース最大の難所である急な登り区間が始まります。
湖西側の登り区間は標高差150メートルを3キロで登る最大の難所
前述のとおり、標高差約150メートルを約3キロメートルで登る区間です。樹林帯の中を進む箇所もあり、日差しが遮られるため夏場でも走りやすいという声がある一方、勾配自体はかなりきついので、ロング走の後半に差し掛かるタイミングでこの登りに入ることになります。ここで無理をせず、必要であれば歩きを織り交ぜるペース配分が求められます。
鳥居原エリアは「相模原のレインボーブリッジ」を望む休憩ポイント
湖の対岸を一望できるビュースポットとして知られるエリアです。特に紅葉シーズンには、対岸にかかる「虹の大橋」と紅葉が一望でき、地元では「相模原のレインボーブリッジ」の愛称で親しまれています。この付近は駐車場やトイレも整備されており、給水ポイントとしても活用しやすい場所です。
虹の大橋はコース随一の写真スポット
湖の一部を横断する橋で、コースのハイライトの一つです。橋の上からは宮ヶ瀬湖の広がりと周囲の山並みを一望でき、ロング走の途中で足を止めて写真を撮りたくなる景観が広がっています。
服部牧場のジェラートはゴール後のご褒美
コース沿いには「服部牧場」があり、森林浴をしながら味わえるイタリアンジェラートが人気を集めています。営業時間は土日祝日と平日で異なるため、立ち寄りを考えている場合は事前に確認しておくとよいでしょう。ロング走のご褒美として、ゴール後に立ち寄るランナーも多いスポットです。
湖畔園地・あいかわ公園エリアは週末に家族連れで賑わう
2万平方メートルを超える「けやき広場」を中心に、長さ315メートルの大吊り橋、カヌーが楽しめる親水池、バーベキューのできるピクニック広場などが整備されているエリアです。ファミリー層の利用も多く、週末は賑わうため、走る際は歩行者や小さな子どもとの接触に注意が必要です。
アクセスは本厚木駅からバス60分、車なら駐車場5カ所から選べる
電車・バスを利用する場合、小田急線本厚木駅が最寄りの主要駅になります。本厚木駅北口のバス乗り場から神奈川中央交通バスの「宮ヶ瀬」行き(系統番号は厚20、厚21など)に乗車し、終点の「宮ヶ瀬」バス停で下車します。所要時間はおよそ60分程度です。新宿駅から本厚木駅までは小田急線の急行や快速急行でおよそ1時間弱なので、都心からでも日帰りでロング走に出かけやすい立地と言えます。
車でアクセスする場合は、周辺に複数の駐車場が整備されています。湖畔エリアには「水の郷駐車場」「小中沢駐車場」、ダムサイトエリアには「あいかわ公園南駐車場・北駐車場」、鳥居原エリアには「鳥居原園地駐車場」などがあり、コースのどこからでもスタートしやすい環境が整っています。
| エリア | 主な駐車場 |
|---|---|
| 湖畔エリア | 水の郷駐車場、小中沢駐車場 |
| ダムサイトエリア | あいかわ公園南駐車場、あいかわ公園北駐車場 |
| 鳥居原エリア | 鳥居原園地駐車場 |
休日やイベント開催時、紅葉シーズンなどは駐車場が混雑することがあるため、早めの到着を心がけると安心です。
給水・トイレは鳥居原と水の郷に集中、コンビニは少なく補給食の携行が必須
ロング走を行ううえで気になる補給ポイントについても触れておきます。トイレは、ビジターセンターや湖畔園地内の各所に整備されているほか、鳥居原エリアや水の郷エリアにも設置されています。飲食店については、水の郷商店街や湖畔園地の虹の大橋周辺に集まっており、あゆの塩焼きなどの名物グルメや軽食を購入できます。
ただし、コース全体を通して見ると、24時間営業の店舗が豊富にあるわけではないため、ロング走の際は事前にスポーツドリンクや補給食、塩分タブレットなどを携行しておくことを強くおすすめします。特に夏場のロング走では、こまめな水分補給と塩分補給、さらに足がつるのを防ぐためのサプリメントの携行が、実際の完走者からも勧められています。
春の桜まつりから冬の澄んだ空気まで、四季で表情が変わる
宮ヶ瀬湖は四季を通じて表情を変える場所です。春には湖畔に桜が咲き誇り、水の郷周辺では「宮ヶ瀬桜まつり」も開催されます。過去の開催実績では4月上旬の週末にかけて複数日程で行われ、宮ヶ瀬湖畔園地や宮ヶ瀬水の郷プロムナード周辺で、約1000本の桜を楽しむことができます。プロムナードではステージイベントやふれあい動物園なども催され、ロング走の後にお祭りの雰囲気を味わうという組み合わせ方もできます。桜のトンネルの下を走り抜けるロング走は、この時期ならではの楽しみ方です。開催時期は年によって変動するため、出かける前に宮ケ瀬水の郷観光協同組合などが発信する最新情報を確認しておくと安心でしょう。
夏は新緑のなかを走ることになり、標高がある分、都心部よりも体感的に涼しく感じられるという声もあります。ただし直射日光を遮る場所とそうでない場所の差があるため、暑さ対策は油断せず行いましょう。
秋は宮ヶ瀬湖の紅葉が見頃を迎えるシーズンです。例年10月中旬頃から広葉樹を中心に色づき始め、高台の斜面ではドウダンツツジの紅葉も楽しめます。鳥居原ふれあいの館周辺からは、虹の大橋と紅葉のコラボレーションを一望できる絶景ポイントとして知られており、この時期に合わせてロング走の計画を立てるランナーも少なくありません。
冬は空気が澄んで遠くの山並みまでくっきりと見渡せる季節です。気温は下がりますが、坂道の多いコースだけに体は温まりやすく、ウェア選びさえ工夫すれば快適に走れます。
安全のカギはツキノワグマ対策と坂道でのペース配分
宮ヶ瀬湖の周回コースは東丹沢の山あいに位置しているため、走る際にはいくつか注意しておきたい点があります。
まず、山間部特有の野生動物との遭遇リスクです。神奈川県内の丹沢山系ではツキノワグマの目撃情報が報告されることがあり、特に早朝や夕方など薄暗い時間帯は活動が活発になりやすいとされています。ロング走で早朝や日没前後にコースを利用する場合は、鈴やホイッスルなど音の出るものを携行する、単独走を避けて複数人で走るといった対策を検討するとよいでしょう。出発前には自治体などが発信する最新の出没情報をチェックしておくことをおすすめします。
次に、コースのアップダウンです。前述のとおり、湖西側では標高差150メートルを3キロメートルで登る急勾配区間があります。ロング走の後半にこの登りに差し掛かる走行プランを組む場合、前半で脚を使いすぎないペース配分が重要になります。逆にこの登りを前半に持ってくるルート取りをすれば、後半は下りと平坦基調で距離を稼ぎやすくなるため、自分の脚力や当日のコンディションに合わせてスタート地点とルートの向きを選ぶとよいでしょう。
また、週末や観光シーズンには家族連れや観光客で賑わうエリアもあるため、歩道を共有する意識を持って、すれ違いや追い越しの際は十分な間隔を取ることが大切です。路面は舗装されている区間がほとんどですが、一部樹木の落ち葉や落枝がある区間もあるため、足元にも注意が必要です。
ロング走メニューとしては30キロ走・35キロ走への発展がしやすい
マラソン練習において、ロング走はインターバル走やペース走と並んで、あるいはそれ以上にレースパフォーマンスに直結する重要なトレーニングだとされています。一般的には25キロメートル以上、時間にして90分以上継続して走ることをロング走の目安とする考え方が広く知られており、宮ヶ瀬湖の17キロメートル周回コースは、単体で走ればロング走の入り口として、あるいはスタート地点からもう一往復距離を足すことで、フルマラソンに向けた30キロメートル走・35キロメートル走のメニューにも発展させやすい距離感です。
フルマラソンで直面しやすい「30キロの壁」を越えるためには、レース本番で余裕のあるペースで前半に入り、脂質をうまく使うランニングエコノミーを養っておくことが大切だとされています。宮ヶ瀬湖のようにアップダウンのあるコースでロング走をこなしておくことは、平坦なコースだけでは鍛えにくい脚全体の筋持久力や、心肺への負荷変化に対応する力を養ううえでも効果的です。近年は、レースペースのおよそ9割程度のペースで35キロメートルから40キロメートルを走りきれる体を作ることを目標にする考え方も広まっており、宮ヶ瀬湖の周回を複数回組み合わせることで、そうした高強度ロング走のメニューにも対応できます。
ただし、いきなり長い距離やレースペースに近いペースで坂の多いコースを走ると、故障のリスクが高まります。普段のトレーニング強度から急激に距離やペースを引き上げるのではなく、まずは1周17キロメートルを無理のないペースで走りきることを目標にし、慣れてきたら距離を伸ばす、ペースを上げるといった段階的な組み立てを意識するとよいでしょう。
実走ランナーの記録は平均5分08秒毎キロ、1周1時間28分
宮ヶ瀬湖1周のコースを実際に走った複数のランナーの記録がインターネット上で公開されています。あるランナーは平均ペース5分08秒毎キロで1周を1時間28分ほどで走りきったと報告しており、コース全体を通じて歩道が広く、交通量も少ないためマイペースで走りやすかったと述べています。一方で、坂道の多さと距離のそこそこの長さから、こまめな水分補給、塩分タブレットの携行、足がつるのを防ぐためのケア用品の準備を勧める声もあります。
また、11キロメートル区間を複数回繰り返して距離を伸ばす「宮ケ瀬湖11キロ×n周回ラン」のようなアレンジで楽しんでいるランナーもおり、コース全体を1周するだけでなく、部分的な周回を組み合わせて自分に合った距離設定にする使い方も広がっています。
コースの難易度については、複数の体験記で共通して「アップダウンが徐々に脚を削っていく」といった趣旨のコメントが見られます。10キロメートル付近にもややきつめの登りがあり、さらに17キロメートル手前、ゴールに近づいたあたりの登りが最後に効いてくるという声も多く、序盤から脚を使い切らないペース配分の重要性が繰り返し語られています。反対に、景観の良さについては一貫して高く評価されており、宮ヶ瀬ダムや湖畔の緑を眺めながら走れる爽快感が、坂のきつさを補って余りある魅力として紹介されています。
24時間リレーマラソンや宮ヶ瀬ぐるり20Kも開催されてきた
宮ヶ瀬湖畔園地では、「宮ヶ瀬湖24時間リレーマラソン」という大会も開催されています。こちらは湖畔園地内に設定された1周約1.8キロメートルの周回コースを使い、6人から15人程度のチームで24時間タスキをつなぎながら走り続けるリレー形式の大会です。周回コース自体は湖を1周するロングコースとは別物ですが、宮ヶ瀬湖がランニングイベントの舞台として地域に根付いていることがうかがえます。ロング走の合間に、こうした大会にチームで参加してみるのも、モチベーション維持の一つの方法です。
また、湖を周回するロングコースそのものを舞台にした「宮ヶ瀬ぐるり20K」という、現役トレイルランナーが同行するトレイルランニングツアー形式の大会も開催されたことがあります。ロードだけでなく、周辺の丹沢山系にはトレイルランニングのフィールドも広がっており、宮ヶ瀬湖のロング走に慣れてきたら、丹沢方面のトレイルにステップアップするランナーも少なくないようです。実際に、秦野からヤビツ峠を経て宮ヶ瀬湖まで走るロングトレイルの活動記録も公開されており、宮ヶ瀬湖はロードランナーとトレイルランナー、双方にとっての結節点のような役割も担っています。
神奈川県の東丹沢に位置する宮ヶ瀬湖は、1周約17キロメートルの周回コースを持つ、都心からもアクセスしやすいロング走の穴場です。歩道が広く交通量も少ないため走りやすい一方、湖西側には標高差150メートルを3キロメートルで登る急勾配区間があり、コースの特性を理解したうえでのペース配分が求められます。水の郷商店街、宮ヶ瀬ダムのダムサイト、鳥居原からの絶景、虹の大橋、服部牧場のジェラートなど、走りながら楽しめる見どころも豊富で、季節ごとに異なる表情を見せてくれるのも魅力の一つです。早朝や夕方の野生動物への注意、坂道でのペース配分、こまめな補給といったポイントを押さえておけば、フルマラソンに向けたロング走のメニューとしても、景色を楽しみながらのロードランとしても、この17キロメートルの周回コースは十分に応えてくれます。








