玉川上水緑道は、東京の杉並区から福生市まで約24kmにわたって続く、新緑と木陰に包まれた都内屈指のジョギングコースです。江戸時代1653年に完成した歴史ある水路沿いに整備された緑道は、土の柔らかな路面、ほぼ平坦な地形、そして頭上を覆うケヤキやコナラの木々が作り出す緑のトンネルが特徴で、特に4月下旬から6月にかけての新緑の季節は、都内とは思えない別世界の走り心地を体験できます。本記事では、玉川上水緑道がなぜ多くのランナーに愛されているのか、その歴史的背景から各区間の特徴、新緑と木陰がもたらす独特の魅力、初心者から長距離ランナーまでの活用方法、そして季節ごとの楽しみ方まで、玉川上水緑道のすべてを徹底的に解説します。これから走る場所を探している方、新緑の中で気持ちよく走ってみたい方にとって、最適な情報をお届けします。

玉川上水緑道とは──新緑と木陰に恵まれた都内屈指のジョギングコース
玉川上水緑道とは、東京都杉並区の浅間橋から福生市の平和橋までの約24kmにわたって整備された、緑豊かなグリーンロードのことです。江戸時代に開削された玉川上水という歴史的な水路沿いに広がる緑地で、東京都が「むさしのの都立公園」の一環として管理しています。
このコースが多くのランナーに支持されている理由は、大きく三つあります。第一に、路面のほとんどが土道や砂利道で、足への衝撃が柔らかく吸収されること。第二に、江戸時代に水を流すために設計された極めて緩やかな勾配のおかげで、24km近くがほぼ平坦であること。第三に、ケヤキやコナラ、クヌギといった大きな広葉樹が頭上を覆い、コースのほぼ全区間で木陰が確保されていることです。
これら三つの条件が揃うランニングコースは、東京都内では極めて稀です。アスファルトの硬い路面、信号のストップ、そして直射日光──都内でジョギングをする際に避けがたいこれらのストレスから解放される環境が、玉川上水緑道には整っています。
玉川上水の歴史──370年以上前から武蔵野を潤してきた水路
玉川上水緑道の魅力を理解するには、まずその基盤となる玉川上水の歴史を知っておくことが大切です。玉川上水は、江戸時代前期の1653年(承応2年)に完成した、江戸市中への飲料水供給を目的とした上水道です。
幕府の命を受けた庄右衛門・清右衛門の兄弟(のちに「玉川」の姓を与えられたことから「玉川兄弟」と呼ばれる)が工事を請け負い、同年4月4日に着工。わずか8か月後の11月15日には完成したと伝えられています。当時の土木技術と測量精度の高さがうかがえる大事業でした。
起点となる取水口は、東京都羽村市にある「羽村取水堰(はむらしゅすいぜき)」です。羽村が選ばれた理由には地形上の優位性があり、標高が高く、多摩川が南岸の草花丘陵の尾根にぶつかって対岸へ水が集まりやすい地形をしていました。その水を堰き止めて取水口から水路へ引き込み、武蔵野台地をほぼ東向きに流して、現在の新宿区四谷四丁目付近にあった四谷大木戸まで約43kmにわたって運んだのです。
この全長約43km(正確には42.74km)の水路は、高低差わずか92.3メートルという緩やかな勾配を利用し、ポンプなど動力を一切使わず自然の重力だけで水を流す設計でした。江戸市中では100万人を超える人口の飲料水として機能し、都市の発展を支えました。水は四谷大木戸を経由し、地下の石樋・木樋を通じて各地へ分配され、江戸のまちのライフラインとして欠かせない存在となっていました。
明治時代に入ると、近代的な水道システムの整備が進み、玉川上水の飲料水としての役割は次第に縮小していきました。しかし水路そのものは完全に廃止されることはなく、現在でも一部区間では多摩川の水が流れ続けています。昭和になってから水路沿いの土地が緑地として整備され、市民の憩いの場・散歩道・ランニングコースとして活用されるようになりました。これが現在の「玉川上水緑道」の姿です。
新緑の季節の玉川上水緑道──緑のトンネルを走る特別な体験
玉川上水緑道を走る上で最もおすすめしたい季節は、4月下旬から6月にかけての新緑の時期です。本記事の執筆基準日である2026年5月1日は、まさに新緑が最も輝くタイミングに当たります。
この時期、緑道沿いに立ち並ぶケヤキ、クヌギ、コナラ、ムクノキ、ヤマザクラといった落葉広葉樹が、一斉に若葉を展開します。冬の間は枯れ枝だけだった木々が、爆発するように鮮やかな緑の葉を広げ、緑道の上に覆いかぶさります。上を見上げると、光に透けた若葉が輝いて見え、その眩しいほどの緑は、何百メートルも先まで緑のトンネルとなって続いていきます。
朝の早い時間帯に走ると、この体験はさらに格別なものになります。木々の間から差し込む朝日が葉を通して柔らかい光となり、緑道の路面に複雑な影と光の模様を描き出します。この「木漏れ日」の美しさは、玉川上水緑道を語る上で外せない魅力のひとつです。
新緑が生む木陰は、走り心地にも直接影響します。5月の東京はすでに日差しが強く、太陽の下でのジョギングは体温を急激に上昇させます。しかし玉川上水緑道では、コースのほぼ全区間が高木の枝葉に覆われており、直射日光がほとんど当たりません。木陰の中を走ることで体感温度は数度低く保たれ、同じ気温・同じ速度でも体への負担がまったく異なります。夏のジョギングを快適に続けるために玉川上水緑道を選ぶランナーが多いのは、この木陰の存在があるからです。
新緑の輝きは5月中旬ごろにピークを迎え、6月になると葉が濃くなって深い緑へと変化していきます。この変化も見逃せません。若葉の黄緑から成熟した深緑へと移り変わる様子は、緑道を定期的に訪れているランナーだけが気づくことのできる、季節の微妙な変化の美しさです。
木陰と木漏れ日が生む感覚的な魅力──都市の喧騒から離れる瞬間
多くのランナーが玉川上水緑道を「都内で一番好きなコース」に挙げる理由として、データや数字では表しきれない感覚的な魅力があります。
まず、走りながら聞こえてくる音の世界が特別です。住宅街のすぐそばを走っているにもかかわらず、緑道に入ると車の騒音がほとんど届かなくなります。代わりに聞こえてくるのは、葉が風に揺れるざわめき、木々の間を飛び交う野鳥のさえずり、そして上流区間に近い場所では水路を流れる水のせせらぎです。この音の変化だけで、都会の喧騒から切り離された感覚が生まれます。
野鳥の種類も豊富で、玉川上水沿いはバードウォッチングのスポットとしても知られています。シジュウカラ、コゲラ、ウグイス、オナガ、カワセミなど、都市部ではなかなか見られない種も含め、さまざまな野鳥が生息しています。走りながら鳥の声に耳を傾けると、ジョギングの単調さが消え、まるで自然の中の探検のような感覚に変わります。
土の路面が生み出す感触も独特です。アスファルトの上を走るときのコツコツとした硬い感触とは異なり、土の上では足が沈み込むような柔らかさがあります。長距離を走った後でも足の疲労感が違い、翌日に疲れが残りにくいとランナーたちは語ります。
さらに、コース沿いには玉川上水本流が伴走するように流れており、夏の日にはその水の気配が涼しさを演出します。水辺特有の湿った空気感は、ランニング中の体感温度を下げる役割を果たしています。
玉川上水緑道の各区間の特徴──長い緑道を楽しみ尽くす方法
玉川上水緑道は24kmの長大なコースですが、一度にすべてを走る必要はありません。沿線には多くの駅があり、好きな区間だけ走ってスタート・ゴールを設定できる柔軟性が魅力です。各区間の特徴と見どころを紹介します。
浅間橋〜吉祥寺・三鷹エリア(下流部)
杉並区の浅間橋を起点とする下流部は、京王井の頭線の沿線と並行しており、富士見ヶ丘駅、久我山駅などからアクセスしやすい区間です。緑道の雰囲気は落ち着いており、沿道の住宅との距離が近いのが特徴です。三鷹方向に向かうと武蔵野市内へと入り、緑が増してきます。吉祥寺周辺では井の頭恩賜公園と近接しており、緑道から公園へ足を延ばすことも可能です。
三鷹〜武蔵境エリア(中下流部)
三鷹駅や武蔵境駅からアクセスできるこのエリアは、玉川上水の流れを間近に感じながら走れる区間です。水路沿いに木々が生い茂り、特に新緑の季節は緑のトンネルが美しく輝きます。萬助橋から牟礼橋にかけての区間は、みずみずしい草木が爽やかな風景を作り出し、特におすすめのスポットとして多くの人に愛されています。
小平エリア(中流部)
西武国分寺線「鷹の台」駅が最寄りとなる小平エリアは、水路がよく保存されており、清流が直接見えるスポットもあります。東京都の史跡に指定されており、自然環境とともに歴史的価値も高い区間です。上水本町付近では玉川上水の流れを間近に観察でき、江戸時代の水路としての面影が色濃く残っています。
立川〜多摩モノレール沿線(中流部)
多摩都市モノレールの玉川上水駅を拠点とするこのエリアは、立川市・昭島市・武蔵村山市にまたがる区間です。多摩モノレールから乗り換えて立川観光と組み合わせやすく、周辺には立川基地跡地を整備した昭和記念公園もあります。緑道の幅が広くなる区間もあり、ゆったり走れるのが特徴です。
羽村〜福生エリア(上流部)
緑道の上流部に当たる羽村・福生エリアは、都心から最も遠く、自然の豊かさが際立ちます。羽村取水堰では、多摩川から玉川上水へ水を引き込む歴史的な施設を実際に見ることができます。取水堰周辺は公園として整備されており、桜の名所としても知られている場所です。
季節ごとの玉川上水緑道──春夏秋冬で表情を変える緑道の魅力
玉川上水緑道は、季節ごとに異なる顔を見せてくれます。一年を通して何度訪れても飽きることがありません。
春(3月下旬〜4月)──桜のトンネルを走る絶景
玉川上水緑道は、江戸時代からの桜の名所として知られています。小金井橋を中心とした約6kmの区間には、幕府の命によって植えられた桜の古木が残っており、毎年3月末から4月初旬にかけて満開の花を咲かせます。桜の木が緑道の両側に立ち並ぶ区間では、花のトンネルの下を走る格別な体験ができます。花びらが風に舞い、路面が桜色に染まる光景は、玉川上水緑道ならではの春の風景です。武蔵野市内の玉川上水沿いには約200本の桜が咲き、地域の桜祭りも開催されます。
初夏(4月下旬〜6月)──新緑と木陰のベストシーズン
新緑の季節が、玉川上水緑道のジョギングに最も適した時期です。若葉が木陰を作り、木漏れ日が路面に降り注ぐ美しい環境の中で走ることができます。うど橋から境橋にかけての区間では、梅雨の時期を前にして紫陽花が色とりどりに咲き誇り、新緑の緑とのコントラストが美しく映えます。6月の雨上がりに走ると、土と草の清々しい香りがあたりに漂い、五感すべてで自然を楽しむことができます。
夏(7月〜9月)──木陰の涼しさを最大限に活かす
東京の夏は過酷です。気温35度を超える猛暑日が続くと、屋外でのジョギングは熱中症のリスクを伴います。しかし玉川上水緑道は、夏でも木陰のおかげで比較的涼しく走れる数少ないコースのひとつです。緑道の大部分が高木に覆われているため、直射日光がほとんど当たらず、体感温度がぐっと下がります。水路近くでは水辺の涼しさも加わり、早朝に走ればさらに快適です。夏の蝉時雨の中を、木陰に包まれながら走る体験は、東京という大都市の中にいることを忘れさせてくれます。
秋(10月〜11月)──紅葉と黄葉の美しさ
秋になると、新緑とはまた異なる美しさが緑道を彩ります。ケヤキやコナラ、イチョウなどが赤や黄色に色づき、落ち葉が積もった路面を走る感触は秋ならではの心地よさです。晴れた秋の午後、黄金色に輝くケヤキ並木の下を走る体験は、写真に収めたくなるような美しさがあります。
冬(12月〜3月)──静寂と歴史を感じる時間
葉が落ちた冬の玉川上水緑道は、水路がよく見え、江戸時代の水路としての姿を一番リアルに感じられる季節です。木々の葉が邪魔をしないため、空が広く開けて見え、開放的な雰囲気があります。空気が澄んでいる冬の朝は、特に気持ちよく走れます。落ち葉が積もった後の静寂の中で、江戸から続く歴史ある水路に思いを馳せながら走るのも、玉川上水緑道ならではの楽しみ方です。
玉川上水緑道のジョギング実用情報──アクセス・トイレ・路面の注意点
玉川上水緑道でのジョギングを快適に楽しむための実用情報をまとめます。
アクセスと主要なスタート地点
緑道の沿線には多くの駅があり、どこからでもスタートできるのが大きなメリットです。下流側の杉並区エリアでは、京王井の頭線「富士見ヶ丘」駅から約600m歩いて浅間橋へ向かえます。武蔵野・三鷹エリアでは、JR中央線の「三鷹」駅または「吉祥寺」駅が便利です。小平エリアでは西武国分寺線「鷹の台」駅が最寄りで、東に向かうと玉川上水沿いの自然豊かな区間に入れます。立川エリアでは多摩都市モノレール「玉川上水」駅が拠点になります。上流側の羽村・福生エリアでは、JR青梅線「羽村」駅が最寄りです。各区間の駅はほぼすべて電車でのアクセスが可能なため、一方通行で走り、ゴールで電車に乗って帰るというプランも立てやすくなっています。
トイレと給水
コース沿いには定期的に公園やトイレが設置されており、長距離走でもトイレに困りにくい環境です。ただし区間によってはトイレまでの間隔が長い場所もあるため、事前にルートを調べておくと安心です。コース上には自動販売機や売店が少ない区間もあります。特に長距離を走る場合は、ペットボトルなどで水分を携帯しておくことを強くおすすめします。夏季は特に熱中症対策として、走り出す前にしっかり水分を摂っておくことが重要です。
路面状況の注意点
路面はおおむね土道や砂利道で柔らかいのが特徴ですが、太い木の根が地表に盛り上がっている箇所が随所にあるため、足元への注意は欠かせません。大雨の後は地面がぬかるむ箇所もあります。走り慣れていない場所では最初はゆっくり走り、路面の状況を確認しながら進むのがおすすめです。シューズはトレイルランニング用までいかなくても、ソールが厚めで安定感のあるものを選ぶと快適に走れます。
早朝走行のすすめ
特に夏の季節は、気温が上がる前の早朝にスタートするのが望ましい時間帯です。早朝の緑道は訪れる人も少なく、野鳥の声が特によく聞こえ、静かな環境の中で集中してランニングを楽しめます。朝露で木の葉が光る光景は、早起きしたランナーだけが楽しめる特権です。
玉川上水緑道の植生──武蔵野の雑木林が生み出す豊かな緑
玉川上水緑道の新緑と木陰の豊かさを語る上で、その背景にある植生について理解しておくと、緑道の自然をより深く楽しめるようになります。
玉川上水沿いに広がる森は、「武蔵野の雑木林」と呼ばれる二次林です。武蔵野台地はもともと、関東ローム層に覆われた水はけの良い台地で、江戸時代以前はススキなどの草原が広がる場所でした。1654年に玉川上水が開通したことで、この台地への大規模な農地開発が可能になり、農家たちは薪や堆肥の原料として周辺の雑木林を利用・管理するようになりました。
その雑木林の主役となったのが、コナラとクヌギです。この二種は定期的に伐採されても切り株から新芽(萌芽)が出やすく、繰り返し利用できる「萌芽更新」に優れた樹木です。コナラとクヌギを中心に、クリ、イヌシデ、ケヤキ、エノキ、ヤマザクラなどが混在する雑木林が形成され、これが武蔵野の典型的な森の風景となりました。
玉川上水沿いには、こうした武蔵野の雑木林の植生が現在も残っており、緑道の豊かな緑の源となっています。特に新緑の季節、コナラやクヌギの若葉は半透明な質感を持ち、光を透過して輝くような黄緑色を見せます。この色が「武蔵野の新緑」の独特の美しさを生み出しているのです。
緑道沿いにはケヤキの大木も多く、その幅広い枝葉が緑道の上に大きく張り出して木陰を作っています。ケヤキは秋に美しく紅葉する樹種でもあり、新緑の黄緑から深緑、そして秋の赤褐色へと一年を通して変化する様子は、緑道を訪れるたびに違う表情を見せてくれます。林床では春にスミレやオオイヌノフグリ、夏にはドクダミやヤブミョウガなど、季節ごとに小さな花が咲いています。足元の植物に目を向けながら走ると、ジョギングはさながら植物観察の旅にもなります。
初心者ランナーのための玉川上水緑道活用術
玉川上水緑道は、ランニングを始めたばかりの初心者にとっても理想的なコースです。走り始めの段階でこの緑道を選ぶことで、長く走り続けられる習慣づくりにつながる理由がいくつかあります。
まず、路面が柔らかい土道であることが、初心者の大敵である「膝の痛み」や「すねの張り」を防ぐのに役立ちます。アスファルトの上での走り始めは、衝撃吸収が不十分で足や膝への負担が大きく、走り始めて数週間で痛みが出て挫折するケースが多くあります。その点、玉川上水緑道の土道は着地のたびにクッションとなり、関節への負担を軽減してくれる特徴があります。
次に、コースが長く複数の区間に分かれているため、体力に合わせて走る距離を自由に設定できます。初心者は最初の目標距離として3km程度が適切とされていますが、玉川上水緑道なら好きな駅からスタートして適当なところで折り返すだけで、自分のペースに合った距離をいつでも走れます。慣れてきたら少しずつ距離を延ばし、将来的には10km、フルマラソンへのステップアップも視野に入れられます。
ペースについては、最初は「会話ができるペース」(キロ7〜8分程度)を目安にすると良いとされています。玉川上水緑道は平坦なため、ペース管理がしやすく、自分のペースを体で覚えるのに最適な環境です。無理に速く走ろうとせず、景色を楽しみながらゆっくり走ることで、ランニングを「つらいもの」ではなく「楽しいもの」として記憶に定着させることができます。
緑道でのランニングを習慣化するコツとして、曜日や時間を固定することも有効です。「毎週土曜日の朝7時に三鷹駅から走り始める」というように決めると、行動のトリガーが明確になり継続しやすくなります。緑道は季節によって景色が変わるので、「今週はどんな緑の色だろう」という小さな楽しみが、また来週も来たいという動機づけになります。
長距離ランナーへの対応──玉川上水緑道の本気のポテンシャル
玉川上水緑道は初心者だけでなく、しっかりとした距離を走りたい経験者にも応える懐の深さを持っています。
全長24kmの緑道を端から端まで走れば、それだけで24kmの走行距離になります。フルマラソン(42.195km)の約57%に相当する距離を、信号でのストップもなく、ほぼ一本道で走り通せるのは、都内では玉川上水緑道でしかできない体験に近いものです。
さらに、羽村取水堰から四谷大木戸跡まで歴史的な玉川上水のルートをたどると、全長43km近い超長距離コースになります。これはウルトラマラソン的な挑戦にもなりえる距離です。ランニングコミュニティでは「木陰のグリーンロード23km」として玉川上水のコースが登録されており、多くのランナーが長距離走のコースとして活用しています。
30km走の練習コースとしても玉川上水は人気が高い場所です。フルマラソンの準備で30km走が必要になる時期に、都内で信号なしに30kmを連続して走れる環境は極めて貴重で、緑道を往復することで効率的に距離を踏むことができます。アスファルト路面と比べて関節への衝撃が少ないため、長距離練習による故障リスクを抑えながら走り込めるのも、シリアスランナーにとって見逃せないメリットです。
走った後の楽しみ──玉川上水緑道周辺の立ち寄りスポット
ジョギングを終えた後のひとときも、玉川上水緑道周辺は充実しています。特に三鷹・吉祥寺エリアは、カフェや文化施設が豊富です。
三鷹駅から井の頭公園を結ぶ区間は「風の散歩道」とも呼ばれ、水辺と木々の緑に沿って瀟洒なカフェや小さなギャラリーが点在しています。ランニング後に汗を拭いて立ち寄り、コーヒーを飲みながら緑道の余韻に浸るのは格別な時間です。
「山本有三記念館」の隣には無料で入れる「有三記念公園」があり、四季の草花が楽しめる静かな憩いの空間が広がっています。作家・太宰治と縁の深い三鷹エリアには、太宰治ゆかりの地をめぐる文学散歩のルートもあり、ジョギング後に歴史や文学の世界へ踏み込む楽しみもあります。
吉祥寺エリアまで足を延ばせば、井の頭恩賜公園で静かにストレッチをして体をほぐすのも良い選択です。公園内の池では四季折々の景色が楽しめ、ジョギングの達成感とともに自然の中でゆったり過ごすことができます。
緑道の途中には随所にベンチが設けられており、持参したお弁当を木陰の中で食べる「青空ランチ」もおすすめです。木漏れ日の下で食べるおにぎりは、どんな高級レストランの食事にも負けない美味しさがあります。
玉川上水緑道に関するよくある疑問
玉川上水緑道のジョギングについて、初めて訪れる方から多く寄せられる疑問に、文章形式で答えていきます。
まず「玉川上水緑道のジョギングはいつの季節がベストか」という疑問については、4月下旬から6月にかけての新緑の季節が最もおすすめです。若葉が作る緑のトンネルと木漏れ日の美しさは、この時期にしか味わえない特別な体験です。本記事の執筆基準日である2026年5月1日は、まさに新緑のピーク前の最も生き生きとした若葉が見られる時期にあたります。
「初心者でも走れるのか」という質問には、迷わず「はい」と答えられます。路面が柔らかく関節への負担が少ないこと、ほぼ平坦でペース管理がしやすいこと、好きな区間だけ走れる柔軟性があることから、ランニング初心者にこそおすすめできるコースです。
「どの駅からスタートするのが良いか」については、目的別に異なります。アクセスの便利さを重視するならJR中央線の三鷹駅や吉祥寺駅、自然の豊かさを重視するなら西武国分寺線の鷹の台駅やJR青梅線の羽村駅が適しています。
「夏でも走れるのか」という疑問には、玉川上水緑道は夏のジョギングに最も適した都内コースのひとつだと答えられます。木陰がコースのほぼ全区間を覆っているため、直射日光をほとんど浴びずに走ることができます。
「夜間でも走れるのか」については、街灯が少ない区間が多いため、夜間のジョギングはおすすめできません。安全のためにも日中、特に明るい時間帯に走ることを推奨します。
玉川上水緑道が与えてくれるもの──走り続けたくなる理由
走ることを日課にしている人でも、ときにモチベーションが下がることがあります。「今日は面倒だな」「なぜ走るのかわからなくなった」──そういう時に、玉川上水緑道は不思議とまた走りたいという気持ちを取り戻させてくれる場所です。
その理由は、走りながら得られる「自然との一体感」にあるのかもしれません。アスファルトの道を走るとき、人は意識的・無意識的に「都市の中にいる」という感覚を持ち続けています。車に気をつけ、信号を待ち、人を避ける。それは走りながらも常に気を遣い続けることを意味します。
しかし玉川上水緑道では、そういった緊張感が必要なくなる瞬間があります。木陰の中で、風が葉を揺らす音を聞きながら、土の路面の柔らかさを感じながら走っていると、「走ること」それ自体に意識が向きます。呼吸、足の運び、景色の移り変わり。そういった感覚に集中できる環境が、緑道にはあります。
新緑の季節にはその感覚がさらに増幅されます。目の前に広がる鮮やかな緑、鼻をくすぐる草の香り、足元の柔らかな土、そして頭上から差し込む木漏れ日。五感すべてが自然に包まれるとき、人は走ることの純粋な喜びを取り戻すことができるのです。玉川上水緑道でのジョギングが、多くの人にとって単なる「運動」ではなく「習慣」として定着している理由は、きっとそこにあります。
まとめ──新緑の玉川上水緑道で、走る幸せを取り戻そう
玉川上水緑道は、都内にいながらにして武蔵野の自然を全身で感じられる、東京でも有数のジョギングスポットです。江戸時代1653年から続く歴史的な水路沿いに、約24kmにわたって緑豊かな環境が続くこのコースは、路面が柔らかく、ほぼ平坦で、木陰が多く、季節ごとに表情を変える豊かな自然に恵まれています。
特に4月下旬から6月の新緑の時期は、玉川上水緑道の魅力が最も輝く季節です。若葉が作る緑のトンネル、木漏れ日が描く光と影のコントラスト、鳥のさえずり、土の感触──これらすべてが合わさって、「走ること」を純粋に楽しめる特別な環境を作り出します。コナラやケヤキが作る木陰の下を走れば、強い陽差しの季節でも体への負担を抑えながら、自然の中に溶け込む感覚でジョギングを楽しめます。
まだ走ったことがない人には、ぜひ一度試してほしいコースです。最初は短い区間だけで構いません。最寄り駅から緑道へ足を踏み入れた瞬間、木陰に包まれた緑のトンネルを走り出した瞬間に、その魅力をきっと実感できるはずです。武蔵野の雑木林が生み出す豊かな自然の中で、江戸時代から続く水路の歴史を感じながら走る体験は、他のどんなジョギングコースとも違う特別なものです。
新緑がまさに最も輝く2026年5月の今、若葉の間から差し込む柔らかな日差しを受けながら走る。頭上には緑のトンネルが続き、足元は土の感触が優しく足を受け止める。鳥のさえずりが聞こえ、水路のせせらぎが耳に届く。その瞬間、都会の喧騒はどこか遠い場所のことになります。玉川上水緑道には、そんな「走る幸せ」が詰まっています。ランニングウェアを着て、シューズの紐を結んで、最寄りの駅へ向かいましょう。緑道はいつでも、走る人を待っています。








