北海道の秋は、ランナーにとって特別な季節です。澄み渡る青空の下、色鮮やかな紅葉に彩られた道を走る体験は、単なるトレーニングを超えた五感で楽しむ芸術との対話といえるでしょう。足元では乾いた落ち葉が心地よい音を立て、ひんやりとした秋風が頬を撫でる中、視界いっぱいに広がる赤や黄金色の木々のパノラマは、ランナーズハイをさらに高みへと導いてくれます。北海道には紅葉ジョギングコースとして最適な名所が数多く存在しており、それぞれの場所で見頃の時期や魅力が異なります。札幌近郊の都市型公園から、道南の雄大な湖畔、道央や道東の手つかずの自然まで、多様なコースが揃っているのが北海道の大きな特徴です。本記事では、紅葉の見頃を迎える時期に合わせて、北海道各地の名所となるジョギングコースを詳しく紹介していきます。初心者から上級者まで、自分のレベルや目的に合ったコースを見つけることで、忘れられない秋のランニング体験を実現できるはずです。

北海道の紅葉ジョギングコースが特別な理由
北海道で紅葉の時期にジョギングを楽しむことは、他の地域では味わえない特別な体験となります。その理由は、北海道ならではの気候と自然環境にあります。まず、秋の北海道は気温が適度に低く、ランニングに最適な気候条件が整っています。夏の暑さが和らぎ、冬の厳しい寒さが到来する前の短い期間は、長距離を走っても快適に感じられる絶好のシーズンです。さらに、北海道の紅葉は本州とは異なる独特の色彩を持っており、カエデやモミジの赤だけでなく、カラマツの黄金色やナナカマドの深紅など、多様な色合いが織りなす風景は圧巻です。
また、北海道の紅葉ジョギングコースの名所は、都市部から自然豊かなエリアまで幅広く分布しています。札幌市内の公園であれば、旅行者でも気軽にアクセスできる一方、層雲峡や阿寒湖のような原生的な自然の中では、より冒険的なトレイルランニングを楽しむことができます。このように、ランナーの経験やスタイルに応じて選択肢が豊富にあることが、北海道の紅葉ジョギングコースの大きな魅力となっています。
さらに、北海道では紅葉の見頃が地域によって異なるという特徴があります。大雪山系では9月上旬から紅葉が始まり、道南エリアでは11月上旬まで楽しめるため、約2ヶ月間にわたって紅葉ランニングのチャンスがあります。この紅葉前線の南下を追いかけながら、各地の名所を巡るプランを立てることも可能です。
札幌近郊の紅葉ジョギングコース名所
札幌とその周辺エリアは、都市の利便性と豊かな自然が見事に調和した、紅葉ジョギングの拠点として理想的な場所です。中心部から少し足を延ばすだけで、息をのむような秋の風景がランナーを迎えてくれます。
真駒内公園:ランナーの聖地で味わう本格的な紅葉ラン
真駒内公園は、札幌のランニングコミュニティにとって一年を通じて愛される本格的なトレーニングの拠点であり、紅葉の時期には特別な魅力を放つ名所となります。この公園には約13,200本の植栽樹木と約50,000本の自然木が存在し、秋になると壮大な紅葉のキャンバスへと姿を変えます。モミジ、ヤマモミジ、イタヤカエデ、サクラといった多様な樹種が鮮やかに色づき、見頃は例年10月中旬から下旬にかけて迎えます。
真駒内公園の最大の特徴は、充実したコース設定にあります。代表的な3キロメートル周回コースは、多くの地元ランナーに親しまれており、500メートルごとに距離表示が設置されているため、インターバル走やペース走といった計画的なトレーニングに最適です。さらに、5キロメートル、10キロメートル、ハーフマラソン距離のコースも設定されており、長距離走を希望するランナーのニーズにも応えています。夜21時まで外灯が点灯しているため、仕事終わりのナイトランも安全に楽しむことができ、夕暮れ時の紅葉が照明に照らされる幻想的な風景も味わえます。
公園内のかしわ広場、見晴台、きのこ広場は特に紅葉が美しいスポットとして知られており、ランニングの合間に立ち止まって写真撮影を楽しむランナーも多く見られます。コースは全体的に緩やかですが、一部にゆるやかな登り坂や急な上りも含まれており、トレーニングに適度な負荷と変化を与えてくれます。また、公園から豊平川の河川敷へ接続すれば、信号のない快適なロングランコースを確保することができ、より長距離のトレーニングにも対応可能です。
アクセス面では、札幌市営地下鉄南北線の真駒内駅から徒歩またはバスで容易に到達できます。コース沿いにはトイレ、水飲み場、自動販売機が整備されており、ランナーにとって非常に便利な環境が整っています。駐車場も完備されていますが、土日祝日は有料となる場合があるため、事前に確認することをお勧めします。
中島公園:都心で楽しむアクセス抜群の紅葉名所
札幌の中心部、すすきのの隣に位置する中島公園は、都会のオアシスという言葉がぴったりの、アクセス至便な紅葉ジョギングコースです。特に旅行者ランナーにとって、観光の合間に質の高いランニングを組み込むことができる理想的な場所といえるでしょう。春は桜、夏は新緑、そして秋は燃えるような紅葉と、都会にいながら四季の移ろいを存分に感じられることが、この公園の大きな魅力です。
中島公園の最大の特徴は、250メートルごとに距離表示が設置された、整備の行き届いた1キロメートルの周回コースです。このコースは完全に平坦で走りやすく、初心者やウォーミングアップに最適なだけでなく、上級者がハーフマラソンやフルマラソンを想定した周回トレーニングを行うのにも適しています。コース上からは、菖蒲池や国の重要文化財である豊平館、札幌コンサートホールKitaraといった公園の象徴的なランドマークを巡ることができ、秋には色づいた木々が池の水面に映り込む息をのむような美しい光景が広がります。
中島公園の大きな利点は、ランナー向けのインフラが充実している点です。公園に隣接する中島体育センター内には、ロッカーや更衣室を備えたランニングステーション「Sapporo Machi RUN」が設置されています。また、近隣の札幌エクセルホテル東急内にある「RUN BASE SAPPORO」も利用可能で、着替えや荷物の心配なく、手ぶらでランニングを楽しめます。これは、ホテルに滞在している観光客ランナーにとって非常にありがたいサービスです。
アクセスは地下鉄南北線の中島公園駅または幌平橋駅からすぐの距離で、札幌の主要ホテルからも徒歩圏内です。公園内にはトイレが設置されていますが、公共駐車場はないため、公共交通機関でのアクセスが基本となります。紅葉の見頃は10月中旬から下旬で、真駒内公園とほぼ同時期に楽しめます。
定山渓:温泉と紅葉の渓谷美が融合する特別な体験
定山渓は、決まった周回コースを走るトレーニングの場というよりも、壮大な渓谷美と温泉という至福のご褒美が待つ、体験型のランニングデスティネーションです。札幌の奥座敷として知られるこの温泉地は、全国有数の紅葉名所でもあり、紅葉の見頃は10月上旬から中旬と、札幌市内よりもやや早めに訪れます。
定山渓には明確に定められた周回ランニングコースはありませんが、温泉街を貫く道路や小道がランナーのフィールドとなります。これにより、自分の体力や気分に合わせて距離を自由に設定できます。豊平峡ダム方面への往復コースなど、1キロメートルから5キロメートル程度の様々なルートを設定することが可能です。ただし、一般車両との共有路であるため、常に周囲の交通に注意を払う必要があります。
渓谷沿いには二見定山の道などの遊歩道が整備されており、Aコース(約1.3キロメートル)やBコース(約2.0キロメートル)といった選択肢があります。これらの道は登り下りのある山道を含むため、一定のペースで走るロードジョギングよりは、トレイルランニングや起伏を楽しむパワーウォーキングに適しています。登り坂での心肺機能の強化を目的とするランナーには、絶好のトレーニング環境となるでしょう。
最大の見どころは、温泉街全体で楽しめる五大紅葉です。特に二見吊橋から見下ろす渓谷の景色は圧巻で、豊かに流れる川、険しい岩肌、そして鮮やかな紅葉が織りなすコントラストは、走る疲れを忘れさせてくれます。ランニング後は、数多くの日帰り温泉で汗を流すことができ、リカバリーにこれ以上の環境はありません。温泉街には無料で利用できる足湯や手湯も点在しており、ラン前後のウォームアップやクールダウンに活用できます。
札幌中心部から車またはバスで約50分から60分の距離にあり、日帰りでも十分に楽しめます。公共の駐車場やトイレも整備されているため、マイカーでのアクセスも便利です。
道南エリアの雄大な紅葉ジョギングコース名所
北海道の南部に位置する道南エリアでは、より雄大なスケールの景観が広がります。活火山を望む湖畔コースや歴史ある日本庭園など、ランナーの挑戦意欲を掻き立てる魅力的なコースが揃っています。
大沼国定公園:駒ヶ岳を望む壮大な湖畔周回コース
大沼国定公園でのランニング体験を象徴するのは、コースのどこからでも望むことができる、今なお活動を続ける活火山、秀峰北海道駒ヶ岳の威容です。その姿は、ランナーに自然の力強さと走り続ける活力を与えてくれます。コースはカエデ、ブナ、ナラなどの広葉樹林に囲まれ、秋にはその鮮やかな色彩が湖面に映り込み、幻想的な風景を生み出します。
大沼のメインコースとなるのは、大沼湖畔を一周する約14キロメートルの舗装された周遊道路です。この距離は、週末のロング走にまさに完璧で、常に湖を左手に見ながら、紅葉の森の中を駆け抜けるレイアウトになっています。道路は舗装されており、高低差もほとんどないため、あらゆるレベルのランナーが楽しめます。ただし、イベント時以外は一般車両や自転車も通行するため、道路の左側を走行し、周囲の交通に常に注意を払う必要があります。
紅葉の見頃は例年10月下旬から11月上旬と、道内では比較的遅めです。これは、札幌近郊の紅葉が終わった後でも、まだ紅葉ランニングを楽しめることを意味しており、長期的な紅葉シーズンを楽しみたいランナーにとって貴重な選択肢となります。
大沼の魅力をさらに高めているのが、毎年10月中旬から下旬、まさに紅葉のピークに合わせて開催される北海道大沼グレートラン・ウォークです。このイベントでは、14キロメートルの湖畔ランニングや、湖を2周する27.7キロメートルの湖畔超ハーフマラソンなど、複数のカテゴリーが用意されています。このイベントはタイムを競い合う大会ではなく、美しい景色を楽しむことに重きを置いていることが特徴で、仮装して走る参加者も多く、初心者からベテランまでが一体となって楽しめる和やかな雰囲気が魅力です。ゴール後にはリンゴや牛乳、町特産の王様しいたけなどが振る舞われ、地域の温かいもてなしも人気の理由となっています。
スタート地点となる公園広場は、JR大沼公園駅から徒歩約5分と、鉄道でのアクセスが非常に便利です。公園周辺には駐車場(一部有料)やトイレ、観光案内所を兼ねた大沼国際交流プラザがあります。ラン後の温泉は、七飯町内にあるアップル温泉や東大沼温泉の留の湯などの日帰り施設を利用できます。
見晴公園(香雪園):光と紅葉に包まれる庭園ラン
函館市にある見晴公園(香雪園)は、パフォーマンスを追求するランニングとは一線を画す、文化と光に浸る魔法のような体験を提供します。ここは、本格的な風景式庭園の中を走り、夜には幻想的なライトアップが楽しめるユニークな紅葉名所です。
この公園は単なる広場ではなく、伝統的な造園手法を用いて造られた本格的な風景式庭園です。ランナーや写真愛好家にとってのハイライトは、約100メートルにわたって続くカエデ並木のトンネルで、紅葉の時期には頭上を覆う真っ赤な天井が圧巻の景色を作り出します。特に、真っ先に色づくと言われる板倉前のオオサカヅキは必見で、その鮮やかな赤色は訪れる人々を魅了します。
園内の散策路は、長い距離を走るのではなく、短い距離をゆっくりと、庭園の雰囲気を味わいながら走るのに適しています。約1キロメートル程度の散策路を何周かすることで、異なる角度から紅葉を楽しむことができます。舗装路と砂利道が混在しており、ほぼ平坦な地形のため、初心者や年配のランナーでも安心して走ることができます。
例年10月中旬から11月上旬にかけて開催されるはこだてMOMI-Gフェスタでは、カエデ並木が夜間にライトアップされます。これにより、光と紅葉が織りなす幻想的な空間を走るという、他では決して味わうことのできないライトアップランが可能になります。昼間の自然光の下での紅葉とはまた違った、夜ならではの深みのある色彩を楽しめることが、この場所の特別な魅力です。
アクセスはJR函館駅からバスで香雪園下車、徒歩約1分と良好です。入園料、駐車場ともに無料で、園内には緑のセンターがあり、情報収集に役立ちます。紅葉の見頃は10月中旬から11月上旬で、大沼国定公園と同時期に楽しめるため、道南エリアでの紅葉ジョギングコースを組み合わせたプランも立てやすいでしょう。
道央・道東エリアの原生的な紅葉ジョギングコース名所
道央から道東にかけてのエリアでは、より冒険心あふれるランナーのために、周到な準備と自然への敬意が求められる、手つかずのコースが待っています。これらのコースは、都市型の公園とは一線を画す、野生の美しさと挑戦を提供します。
層雲峡・紅葉谷:トレイルランナーのための挑戦的なコース
層雲峡の紅葉谷は、平坦なジョギングコースではなく、本格的なトレイルランニング、あるいはハイキングのフィールドです。多少のアップダウンがあり、山歩き初心者におすすめとされていることからも、公園の遊歩道とは一線を画す挑戦的なコースであることがわかります。
メインとなるのは、入口から終点の紅葉滝まで片道約700メートル、往復で1.4キロメートルのトレイルです。所要時間は往復で30分から1時間程度と短いですが、内容は凝縮されています。道は赤石川に沿って続き、トレイルからは層雲峡の象徴である柱状節理の断崖を間近に望むことができます。終点の紅葉滝は迫力満点で、荒々しい地質と鮮やかな紅葉の組み合わせが、この地ならではの原始的な美しさを創り出しています。
紅葉の見頃は10月上旬から中旬と早めで、大雪山系の紅葉前線が降りてくる時期に合わせて訪れることをお勧めします。トレイルの入口は層雲峡温泉街から徒歩約15分で、入口付近には15台程度の駐車スペースがありますが、大型車は駐車できません。
最も重要なのがヒグマ対策です。このエリアは明確にヒグマの生息域とされており、ランナーやハイカーは、熊鈴やホイッスルなどの音の出るものを必ず携帯し、常に自分の存在を知らせながら行動しなければなりません。イヤホンの使用は絶対に避け、周囲の音に常に注意を払うことが、このコースを楽しむ上での絶対条件です。
美瑛:パノラマの丘陵地帯を駆け抜ける
美瑛でのランニングは、一つの決まったコースを走るのではなく、世界的に有名な丘陵地帯そのものをフィールドとする探検です。主なルートはパノラマロードとパッチワークの路で、どこまでも続く緩やかな起伏と360度の広大な景色を愛するランナーのための場所となっています。
観光客で混雑するパッチワークの路よりも、美瑛市街地の南に広がるパノラマロードが、ランナーにはおすすめです。ひともクルマも少なめで、一部区間は交通量極めて少なめと報告されているため、比較的安全に走ることが可能です。道路網が広がっているため距離は自由に設定できますが、覚悟すべきはその起伏です。JR美馬牛駅から丘へ向かうだけで110メートル以上の標高差があり、コースは常にアップダウンやカーブの連続です。これは、タフでありながらも非常に走りごたえのあるヒルワークアウトとなるでしょう。
美瑛の秋の主役は、10月中旬から下旬に鮮やかな黄金色に染まるカラマツの木々です。収穫を終えた畑の茶色とのコントラストが、北海道らしい雄大な風景を描き出します。カラマツの黄葉は、モミジやカエデの赤とは異なる落ち着いた美しさがあり、広大な丘陵地帯全体が黄金色に輝く光景は圧巻です。
パノラマロードへのアクセスが良く、標高も高いJR美馬牛駅をスタート地点に選ぶと、序盤の急な登りをいくらか緩和できます。ただし、これらは現役の農道であり、路肩も狭い場所が多いです。大型の農業機械が通行することもあるため、視認性の高いウェアを着用し、常に周囲に注意を払うことが不可欠です。
支笏湖:透明度抜群の湖畔で楽しむ紅葉ラン
支笏湖は、整備された環境の中で原生自然を楽しめる、洗練されたランニングスポットです。日本有数の透明度を誇る支笏湖ブルーの湖水と、紅葉のコントラストはまさに絶景です。支笏湖温泉街や休暇村周辺には、ランニングに最適な環境が整っています。
湖畔にはウォーターフロントコースがあり、特に休暇村の近くには足に優しい0.6キロメートルのウッドチップの散策路が整備されています。このウッドチップのコースは、アスファルトよりも膝や足首への負担が少なく、長距離を走った後のクールダウンランや、故障明けのランナーのリハビリランに最適です。また、樽前山を望む絶景スポットまでの往復約7キロメートルのコースも人気で、中距離のトレーニングに適しています。
ミズナラ、イタヤカエデ、ナナカマドなどが湖畔を彩り、紅葉の見頃は10月中旬から下旬です。湖にかかる赤い山線鉄橋は、青い湖水と紅葉との三色のコントラストが美しい、絶好の撮影ポイントとなっています。支笏湖ビジターセンターでは最新の自然情報を得ることができ、トイレや駐車場も完備しています。札幌中心部からは車で約70分とアクセスも良好で、日帰りでも十分に楽しめる距離です。
阿寒湖:神秘的な原始のトレイルと厳重な安全対策
阿寒湖は、支笏湖とは対照的に、より原始的で神秘的な雰囲気を持つトレイルランニングのフィールドです。ランナーが気軽にアクセスできるのは、湖畔のボッケ遊歩道で、これは1周約1.5キロメートル、所要時間45分ほどの散策路です。森と湖畔、そしてボッケと呼ばれる泥火山を巡る短いながらも、阿寒の自然の息吹を感じられるトレイルランが楽しめます。
森はカツラやミズナラなどの広葉樹と針葉樹が混在し、原生的な雰囲気が漂います。紅葉の見頃は9月下旬から10月上旬と、道内でも最も早い部類に入ります。これは、大雪山系の紅葉と同時期であり、道東エリアでの早期の紅葉を楽しみたいランナーには最適な選択肢です。
阿寒湖でランニングを検討する際に最も重要なのは、ヒグマの活動が非常に活発であるという事実です。ボッケ遊歩道はヒグマの出没により頻繁に閉鎖されます。ここで走る場合は、出発前に必ずビジターセンターで最新の出没情報を確認し、熊鈴や熊スプレーを携行し、絶対にイヤホンをせず、常に音を出しながら走る必要があります。そのリスクは現実のものであり、最優先で考慮すべき事項です。安全が確保できない場合は、走ることを諦める勇気も必要です。
北海道紅葉ジョギングコースの見頃カレンダー
北海道の紅葉は、大雪山の山頂から始まり、徐々に南下していく紅葉前線として進行します。この流れを理解することが、ベストなタイミングで旅を計画する鍵となります。9月上旬から中旬には、大雪山の黒岳や旭岳で紅葉が始まります。9月下旬になると、阿寒湖や然別湖といった道東エリアの湖沼で見頃を迎えます。
10月上旬には、層雲峡や定山渓など、やや標高の高いエリアで紅葉が本格化します。この時期は気温も快適で、トレイルランニングに最適な季節です。10月中旬になると、札幌近郊の真駒内公園や中島公園、支笏湖などが見頃を迎え、美瑛のカラマツも黄金色に染まり始めます。
10月下旬から11月上旬は、道南エリアの大沼国定公園や見晴公園(香雪園)が見頃のピークを迎えます。また、札幌市内でも平岡樹芸センターや北海道大学のイチョウ並木など、遅めの紅葉スポットが美しくなります。このように、約2ヶ月間にわたって異なるエリアで紅葉ジョギングを楽しめることが、北海道の大きな特徴です。計画的に移動すれば、長期間にわたって紅葉の名所を巡るランニング旅行を実現できます。
北海道の秋のランニングに適した装備と服装
北海道の秋の気候は変わりやすく、一日の中でも寒暖差が激しいのが特徴です。ランの開始時は晴れて暖かくても、急に風が冷たくなったり雨が降ったりすることもあります。そのため、重ね着(レイヤリング)が基本となります。
ベースレイヤーには、汗をかいても体を冷やさない、速乾性のある長袖シャツを選びましょう。ポリエステルやウール素材が適しており、綿は汗を吸って乾きにくいため避けるべきです。気温が4度を下回るような寒い日には、薄手のフリースや保温性のあるトップスをミッドレイヤーとして重ねます。
アウターレイヤーとしては、軽量でコンパクトに収納できる、防風性・撥水性のあるジャケットは必須アイテムです。走っている間に天候が変わることも多いため、ウエストポーチやランニングバックパックに入れて持ち運べるものを選びましょう。ボトムスは、ランニングタイツやパンツを気温に応じて選び、タイツの上にショートパンツを重ねるスタイルも万能です。
気温が低い朝晩には、手袋、耳を覆うヘッドバンドや帽子、ウール混のソックスが非常に重要になります。特に指先や耳は冷えやすく、これらが冷えるとランニングのパフォーマンスが大きく低下します。雨天時には、視界を確保するためにツバ付きのキャップが役立ちます。
また、トレイルランニングを行う場合は、トレイルランニングシューズの使用をお勧めします。グリップ力が高く、不整地でも安定して走ることができ、足首のサポートもしっかりしているため、怪我のリスクを減らせます。
ヒグマ対策:北海道ランニングの最重要安全事項
北海道の多くの場所で走ることは、ヒグマの生息地で走ることを意味します。これは、ランナーが直面する最も重要な安全上の課題であり、決して軽視してはいけません。ヒグマとの遭遇を避けるための最も効果的な方法は、不意の遭遇を防ぐために、あらかじめ人間の存在を知らせることです。
ラン前には、特に阿寒湖や層雲峡のような自然度の高いエリアへ行く前には、必ず現地のビジターセンターなどで最新のヒグマ出没情報を確認しましょう。最近の目撃情報がある場合は、そのエリアでのランニングを控える判断も必要です。
ラン中は、熊鈴を携帯することが基本ですが、それだけに頼らず、見通しの悪い場所や川沿いなど周囲の音が大きい場所では、定期的に手を叩いたり、声を出したりして、より確実に存在を知らせましょう。イヤホンは絶対に使用しないことも重要です。周囲の音(動物の気配など)を聞き取ることができなくなるため、非常に危険です。
可能であれば複数人で走り、単独での行動は、特に人里離れた場所では避けましょう。グループでの行動は、音も大きくなりヒグマに気づかれやすいだけでなく、万が一の遭遇時にも対応しやすくなります。また、ヒグマが最も活発になる早朝や夕暮れ時のランニングは避けることも重要な対策です。
ヒグマの生息が確認されているエリアでトレイルランニングを行う際には、熊撃退スプレーの携行を強く推奨します。ただし、風向きや有効射程距離など、使用方法を事前に必ず確認しておきましょう。スプレーは最後の手段であり、まずは遭遇しないための予防が最も重要です。
万が一ヒグマに遭遇してしまった場合は、絶対に背を向けて走って逃げないでください。逃げるものを追う習性を刺激してしまいます。その場で静止し、ヒグマを刺激しないように、低い落ち着いた声で話しかけます。そして、ヒグマから目を離さずに、ゆっくりと後ずさりして距離をとります。両腕を広げるなどして、自分を大きく見せることも有効です。
北海道の紅葉ランニングを最高の思い出にするために
北海道の紅葉ジョギングコースは、初心者から上級者まで、あらゆるレベルのランナーに特別な体験を提供します。札幌の真駒内公園や中島公園のような都市型の公園では、整備されたコースで安全かつ快適に走ることができ、旅行者でも気軽にアクセスできます。定山渓では、温泉とセットで楽しむ贅沢な紅葉ランが可能です。
道南エリアに足を延ばせば、大沼国定公園の壮大な湖畔周回コースや、見晴公園の幻想的なライトアップランといった、他では味わえない体験が待っています。さらに冒険心あふれるランナーには、層雲峡の挑戦的なトレイルや、美瑛の果てしなく続く丘陵地帯、支笏湖の透明な湖畔コース、そして阿寒湖の原始的なトレイルが用意されています。
それぞれの名所には最適な見頃の時期があり、9月下旬から11月上旬まで、約2ヶ月間にわたって紅葉前線を追いかけることができます。この長期間のシーズンを活かして、複数のエリアを巡る計画を立てることも可能です。ただし、素晴らしい体験を実現するためには、適切な装備と周到な準備が不可欠です。レイヤリングを基本とした服装選び、そして何よりもヒグマ対策を含む安全への配慮が、北海道でのランニングを成功させる鍵となります。
入念な計画と適切な準備を行い、自然への敬意を忘れずに、あなただけの特別な秋のランニングアドベンチャーへと走り出してください。筋肉の心地よい疲労感と共に、その目に焼き付けた錦秋の風景は、きっと生涯忘れられない思い出となるでしょう。北海道の紅葉ジョギングコースは、単なるトレーニングの場ではなく、自然の芸術を全身で感じる特別な舞台なのです。









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